三菱自動車工業株式会社

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自動車はそもそも環境負荷の大きな商品

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三菱自動車工業株式会社

「i-MiEV」の開発の経緯についてお聞かせください。

当社での電気自動車(EV)の開発の歴史は、40年以上昔にさかのぼることとなります。自動車が日本国内に普及し始めて排出ガスの問題が顕在化したとき、まだ触媒や燃料制御、燃料噴射という技術がなかったのですが、電気自動車が排出ガス対策のひとつになるということで研究がスタートしました。

しかし、ガソリン車の排ガス技術が進んだこともあって、電気自動車の研究が下火になってしまったのです。しかし、当社では細々とですが、あきらめることなく研究を続けてきました。そして、最近になって燃料の石油依存度を下げることやCO2排出量の問題から、電気自動車が大きく注目を集めるようになりました。

技術的にいえば、バッテリーの進化が上げられます。昔の鉛電池から現在のリチウムイオン電池になって、性能は飛躍的に改善されました。車体の重量に占める電池の割合も、以前は半分ほどであったのですが、現在では2割以下と軽量化がなされています。このような点も、今回の実用化に大きく貢献しています。

種々の次世代車のなかで当社はなぜ電気自動車に注目したのかといえば、粘り強い電気自動車の研究のなかで、リチウムイオン電池を使った技術を蓄積してきたことが挙げられます。そのようなことから、ほかの次世代自動車の技術に取り組むより、電気自動車の技術を極めるほうが、脱石油やCO2排出量という観点からも効果的だと判断したわけです。

「i-MiEV」の開発に取りかかった当初は、海外展開まで想定してはいませんでした。国内限定で、環境対応のシンボル技術として、一定の台数を生産・販売するような企画がスタートしました。その後、開発を進めていくにつれて、社会的な電気自動車に対する期待が予想外に高まり、また海外も含めて他社でも電気自動車の開発やモーターショーでの発表が行われるようになったことから、事業規模を拡大するとともに、海外展開も進めるという方針になったのです。

 i-MiEV

特に、米国では国土の広さもあって当初電気自動車の普及は難しいと考えられていたのですが、いわゆるビッグ3でも開発に乗り出しており、沿岸部ではシティカーとしての用途があるのではないかという市場調査の結果もあって、進出を決めました。

このように、電気自動車の開発を続けているうちに、世の中のほうが予想外の速度で変わってきたということがいえるでしょう。

「i-MiEV」は欧州でも販売され、すでに出荷も始めていますが、欧州バージョンは、パリで開催されていたモーターショーにも出展しました。フランスでは昔から電気自動車の走っている割合が高く、出展された「i-MiEV」も好評だったようです。欧州では自社ブランドとして展開するほか、プジョー・シトロエン社ブランドとして、プジョーでは「iOn(アイオン)」、シトロエンでは「C-ZERO(シーゼロ)」という名称で販売されます。

「i-MiEV」の性能や特徴というのは、どのようなものなのですか。

「i-MiEV」という電気自動車は、軽自動車をベースとしています。それは、軽自動車というのは地方などではセカンドカーとして利用されるケースが多いこと、そもそもセカンドカーであればそれほど走行距離を求められないことが理由です。充電するためのインフラを外に数多く設置することは難しいとしても、軽自動車であれば、一日の走行分を、家庭で夜充電すれば十分ではないかと考えたのです。

「i-MiEV」はまず企業や法人・自治体向けから販売したということもあり、現時点では個人のユーザはそれほど多くないのですが、満足していただいているのではないかと思います。

一世代前の電気自動車というのは、充電システムが特殊であり、非接触方式を採用していました。これは、電気の端子が出ていないので安全なのですが、専用の充電器があるところまで行かなければならないという問題がありました。

しかし、今回は一般的な家庭のコンセントに差し込むことが可能であり、100Vや200Vのコンセントで充電することができます。もちろん、急速充電にも対応しているので、出先でも短時間で充電することができます。

専用の充電器

「i-MiEV」の動力性能は必要十分といえるでしょう。ベースとなっているのは「i(アイ)」というガソリン車なのですが、ターボ仕様の64馬力に相当する47kWのモーターを搭載しています。乗っていただくと分かるのではないかと思いますが、停止時からのスタートでは、むしろターボ車より速いくらいです。重量は「i」よりも200kgほど増えてはいるのですが、それが気にならないほど快適な走りを実現しています。モーターは低速から大きなトルクを発生するので、大人が4人乗っても坂道を楽に登ります。最高速度は130Km/hです。

「i-MiEV」は、スマートハウスとのコラボレーションなども検討されているようですね。

当社で電気自動車を発表したところ、住宅メーカーや充電器メーカーなど、多くの企業様から様々な提案をいただきました。

当社のグループ内でも、株式会社三菱地所設計や三菱地所株式会社などの企業がありますが、そこではもちろん、保有する駐車場などで急速充電器を設置してもらっています。住宅メーカーの三菱地所ホーム株式会社では、電気自動車に対応した、いわゆるスマートハウスの提案も行っています。

太陽電池(ソーラーパネル)で発電する電力は直流ですが、家庭用の電力として使用するには、一度交流に変換する必要があります。電気自動車の場合、電池に貯めている電気は直流なのです。そのため、直流同士で直接充電できれば理想的なのですが、現状ではまだそのような仕組みとはなっていません。しかし、将来的には、直流から直流といった充電も可能になるかも知れません。

「i-MiEV」の充電時間はどれくらいなのですか。

100Vの場合は14時間、200Vの場合では7時間です。急速充電では、30分で80%まで充電することが可能です。

200Vの場合でも充電に7時間かかるというと、長く感じられるかもしれません。本社の地下には電気自動車を数台保有しており、都内を移動するときやお客様が試乗する場合などに利用しているのですが、10kmや20kmの距離を走行したあとに充電することを考えると、7時間もコンセントにつなぐ必要はないわけです。そのため、充電時間でそれほど不便を感じることはないはずです。

なぜ、リース販売という形にしているのですか。

確かに価格がまだ高いということもありますが、メンテナンスリースという形にすることで、お客様のフォローが十分にできるという理由があります。なお、リース期間の満了時にあらかじめ設定した金額で購入することが可能な、購入選択権のついたリースも用意されています。

リース販売だけでなく、今後は現金販売も検討されているのですか。

今後は、そのような形で販売する可能性もあり得るでしょう。(※11月4日の11型「i-MiEV」の発表時に、現金販売への対応が発表されています)。


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