先述しましたが、化学物質というのは、我々の生活を快適にするうえで不可欠なものですが、使い方や管理方法を間違えると、人の健康や自然の生態系に悪影響を与えてしまいます。そのため、しっかりとした管理が重要になります。

当社において、化学物質の管理で特徴的なのは、河川のモニタリングだと思っています。生産時に厳重な管理をして、化学物質の河川への流出を防ぐ、河川へ排出しないというのは、企業として当然のことなのです。

また、輸送時にも「イエローカード」や「容器イエローカード」の配布・添付により、運転者に対して輸送中に化学物質などの漏えいなどが発生した場合に備え、その物質の性質や緊急処理方法などの情報を提供しています。

化学物質の管理という点では、法律も守らなければなりません。PRTR法（※1）や化審法（※2）に基づいてしっかりと管理し、国へ対象となる化学物質の情報の届け出を実施しています。

※1：「PRTR」とは「Pollutant Release and Transfer Register」の略称であり、「化学物質排出把握管理促進法」のこと。同法に基づき、有害性のある化学物質について事業者の管理を徹底し、環境の保全を図る「PRTR制度」などが設けられている。

※2：化学物質審査規制法のこと。化学物質による環境汚染防止を目的として、1973年に制定された。内容には、新規化学物質の事前審査制度の導入などが盛り込まれている。

さらに、産業界と国が連携して、既存の化学物質の情報を集め、その安全性を広く国民に発信する「Japanチャレンジプログラム」では、ライオンは「MES」についてスポンサー表明をして、国と協力して安産性確認作業を実施し、国への報告を終了しています。

水質だけではなく、窒素酸化物（NOx）・硫黄酸化物（SOx）・ばいじん・揮発性有機化合物（VOC）などの排出量を削減する、大気汚染防止への取り組みも進めています。

1960年代に、洗濯用洗剤が原因で河川が泡立つ問題が発生したとお話しましたが、現在は下水処理技術の進歩に加えて、下水処理場が増えたこともあって、化学物質（界面活性剤）がそのまま排出されるというケースは激減しています。ただし、激減してはいますが、ゼロではありません。

そこで、当社では「日本石鹸洗剤工業会」と一緒に、東京や大阪の主要河川で年4回サンプリングを行い、界面活性剤が残留しているか、生物に悪影響はないかということを調査しています。実験・設計・製造において製品の安全性を確かめること、使用後の安全性に配慮することは当然ですが、河川のサンプリングまで実施している企業はほかにはないといえるでしょう。お客様のなかには「ここまで徹底しているの？」と驚かれる方も多いようですね。

単に界面活性剤といっても、シャンプーに含まれるものや衣類用の洗剤に含まれるものなど、様々な種類が存在します。また、企業によっても使用される界面活性剤は異なります。

特に界面活性剤の「MES」と「MEE」については、ライオン独自で河川のモニタリングを実施し、それらの成分がしっかりと分解されて、河川に生息する動植物に悪影響を与えていないということを確認しています。

総括すれば、ライフサイクルアセスメントと同じく、化学物質の管理も原材料の調達から廃棄までという、全体的な視野に立って管理を行っているということです。河川の発泡問題という苦い経験をしたからこそ、それを繰り返さないという思いがあるのです。

「MES」は2004年から行っていますが、「MEE」は2010年からスタートしました。それは、「MEE」を製品に使い始めたのが最近になってからというのが理由です。それだけ、界面活性剤としてもオリジナリティの高いものを使用しているということでもあります。

当社は、昔から“研究者魂”を有する企業であり、生分解性に優れた「AOS（アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム）」という成分も独自に開発しています。そのような精神が、「MES」と「MEE」にもしっかりと引き継がれています。

なお、「トップ」ではコーズマーケティングの一環として、1箱購入につき1円相当（1ハコ1エコ）を、「公益社団法人 日本河川協会」の基金（きれいな川と暮らそう基金）に寄付する「LION トップ エコプロジェクト」も実施しています。これは、大気中のCO2排出量の削減に加え、水環境保全活動を支援することで、「大気と水」の環境を保護する活動です。