新スリーターや台車の使用により、エリアに応じた集配と車両台数の抑制を実践しているとのことですが、詳細についてお聞かせください。
当社では地球温暖化防止の取り組みとして、輸送におけるCO2削減のために「使わない」「使うならエコ」「使い方」という3つの戦略を立てています。ご質問にある新スリーターや台車の使用は「使わない」に該当するものです。
「使わない」とは、できるだけ車両を使用せず新スリーターや台車による集配を推進し、車両台数を抑制して、CO2排出量の削減に取り組もうということを意味します。
新スリーターとは、どのようなものなのですか。
新スリーターというのは“リヤカー付き電動自転車”のことです。要は、リヤカーを電動自転車で引くツールです。2002年ごろに現場の社員の発案で導入されました。現在(※2012年1月現在)、新スリーターは1日当たり2,400台ほど稼働しています。すでに宅急便の集配稼動数の約15%が台車やリヤカー付き電動自転車など、自動車以外での集配にシフトしています。
また、一部に軽自動車を使う以外は新スリーターや台車で集配を行う営業拠点を「サテライトセンター」と呼んでいます。その「サテライトセンター」は、市街地や住宅密集地域を中心に出店が進み、2010年度には累計で1,013店にまで増えています。
都市部で貴社の集配車両を見なくなった気がするのは、これが理由だったのですね。
距離的に車両を使う必要があるセンターでも、近いエリアの集配については台車や新スリーター、軽自動車を活用し、距離のあるエリアでは車両と台車を組み合わせる「バス停方式」と呼ぶ集配を推進しています。エリアに応じた集配方法の選択により、車両台数の削減を図っているのです。
「バス停方式」とはユニークな名称ですが、特定の場所に停車して集配をするのですか。
「バス停方式」とは、エリア内にいくつかある「バス停ポイント」というところに集配車を決まった時間に停め、そこからセールスドライバーやフィールドキャストと呼ばれる集配員が、新スリーターや台車に荷物を積み替えて集配を行うものです。
各店舗から集配員が新スリーターや台車で出るよりも機動力が上がり、しかも車両の走行距離を減らせるのでCO2排出量の削減につながる、さらには効率的な集配が可能というメリットがあります。
車両の使用の抑制として、鉄道や海運によるモーダルシフトへの推進にも取り組んでいますね。
ヤマト運輸では、従来は中長距離の幹線輸送についてはトラックが中心となっていました。その一部を鉄道や海運の利用に移行し、CO2排出量を削減しようというのがモーダルシフトの取り組みです。
モーダルシフトは大気汚染の防止や交通渋滞の緩和にも貢献するということで、2010年度は鉄道の幹線輸送の利用を3区間増やし、全26区間で実施しました。
鉄道へのモーダルシフトに関連して、京都市では路面電車を活用した輸送に取り組んでいますね。
最初に、2010年9月に札幌市で地下鉄を利用した物流の実証実験のお話をいただき、新さっぽろ駅から大通駅の区間で、地下鉄用にカスタマイズされた台車を積み、実証実験を行いました。
その話が当社の京都主管支店の耳に入り、京都市でも同じような取り組みができるのではないかということで、京福電気鉄道株式会社さんにお声がけをしたのがきっかけです。京都市は「歩くまち・京都」を掲げる環境モデル都市であり、嵐山周辺のCO2排出量の削減をテーマに掲げ、昨年(2011年)5月18日より毎日1両を貸し切り、嵐電(らんでん)という路面電車を活用した宅急便の輸送を開始しました。これは実証実験ではなく、集配業務のなかで利用されています。
毎日、輸送のために嵐電の1両を貸し切るとはすごいですね。
今回の取り組みでは、西院車庫から嵐電の車両を1両貸し切り、リヤカーに装着する集配用コンテナを搭載した台車ごと電車に積み込んで宅急便を輸送します。嵐山駅および嵐電嵯峨野駅で台車を降ろし、駅でセールスドライバーが受け取って、それをそのままリヤカー付き電動自転車に積み込んでお届けします。
従来は、物流ターミナルから嵐山担当営業所へ大型トラックで輸送し、そこから2トントラックなどに宅急便を積み替えて配達をしていました。ヤマト運輸では、物流ターミナル間の鉄道輸送はすでに一部で実施しておりますが、物流ターミナルから宅急便を集配する営業所間でのモーダルシフトは初めてのことです。今後は、嵐山駅・嵐電嵯峨野駅以外でも同様の取り組みを導入し、嵐電沿線ではできる限りトラックを使わずに集配を実施する低炭素型集配システムを広げることでCO2削減に取り組んでいきます。
この低炭素型集配システムは、今後ほかの地域でも導入していくのですか。
路面電車を活用した宅急便の輸送は、ヤマト運輸だけではできない取り組みなので、お話しがあればほかの地域でも実施したいですね。ただし、路面電車が走っているところに限られてしまいますが(笑)。
- グループ全体で地球温暖化防止対策を推進
- できるだけ車両を使わない集配
- どうしても使うならば低公害車
- 安全と環境に配慮した運転の徹底
- 社内における環境啓発活動の推進
- 創業100周年に向けた環境への取り組み