貴社では産業用の素材も提供されていますが、パラフィン系潜熱蓄熱材「エコジュール®」についてお聞かせください。
なかなか渋いところを質問されますね(笑)。ノルマルパラフィンというものが「エコジュール®(※以下、登録商標を省略して表記)」の主原料なのですが、それをゲルやマイクロカプセルに加工しています。以前から蓄熱材の開発・販売を行っていましたが、エコジュールという名称で販売を開始したのは2008年からです。
エコジュールは正確には「潜熱蓄熱材」と呼び、水が氷になるように、物質が液体から固体、固体から液体に相変化するときに放出もしくは吸収される熱エネルギー(潜熱)を利用します。
水が氷になるときには、周りに熱を放出して凝固します。逆に氷が水になるときは、周りから熱を吸収して融解します。水であれば0℃で凝固するわけですが、エコジュールでは凝固温度が生活温度領域(3℃から30℃)となっているため、冷やし過ぎや温め過ぎがなく、効率よく熱エネルギーを蓄えられるのです。
エコジュールは熱源と熱利用の時間的なギャップを解消し、熱エネルギーを有効に活用することができます。例えば、ビルの空調システムや自動車の部品(※チャコールキャニスター)など、幅広く利用されています。ビルの空調システムでは、コンテナのようなところにエコジュールを詰め込み、そこに温かい空気を流すことで溶かし、冷たい空気を放出するというような形で使われています。
当社では「ENEOS わが家で創エネ・プロジェクト」というものを進めており、それを実践するためのモデル住宅として、ショールームと体験施設を兼ね備えた「創エネハウス」が横浜市港北区にあります。創エネハウスには太陽光発電やエネファームが備わっており、このエコジュールも住宅部材として利用されています。
例えば、気温の上がる夏にエコジュールが解けて屋内が涼しくなり、気温が下がる冬に固まって暖かくなるのを繰り返すというように、長期間の使用にも十分耐えられます。涼し過ぎる、暖か過ぎるということがなく、適度な温度を保ちます。また、建物の地下にエコジュールを入れておき、日中に送風して涼しい空気を室内に循環させるという利用も可能です。
このような機能が評価され、昨年11月に株式会社日刊工業新聞社とモノづくり日本会議が主催する「2011年“超”モノづくり部品大賞」で、エコジュールが大賞に選ばれました。東日本大震災を経験し、エアコンの節電が注目されたことも影響しているのかもしれません。
先ほどのお話しにあった「ENEOS わが家で創エネ・プロジェクト」についてお聞かせください。
「ENEOS わが家で創エネ・プロジェクト」が発足したのは、2008年6月のことです。簡単にいえば、太陽光発電やエネファームなどを含めて、どのようなエネルギーを家庭に提供することができるのかを考えたときに、実際にモデル住宅で生活してもらいながら、不具合や問題点などを検証・改善して商品化につなげていこうというプロジェクトです。
前述したように、プロジェクトを実践するためのモデル住宅として、ショールームと体験施設を兼ね備えた「創エネハウス」を横浜市に建てています。プロジェクトの発足当時は、夏休みなどを利用して当社の社員やその家族に住んでもらい、検証をしていました。
創エネハウスでは「HEMS(ホームエネルギー・マネジメント・システム/Home Energy Management System)」を導入しており、エネルギー機器の運転状況や、電気・水道などの使用量をモニターで“見える化”し、省エネ制御を行うことが可能です。このような実験や検証を重ね、お客様ごとに最適な「住宅用総合エネルギーシステム」を提供することを目指しています。
このプロジェクトは現在(※2012年1月現在)も継続中なのですが、創エネハウスでは昨年(2011年)9月に、PEFC型からSOFC型のエネファームに切り替えました。
実際に住んでみた方からの感想はありますか。
創エネハウスの内部は風通しを重視して設計されており、外気を上手に取り込むことで室温を適度に保っています。そのような設計であるため壁が少なく、間仕切りが格子状になっているので、室内は開放的な空間となっています。そのため、年ごろの娘さんがいると気苦労も多いようです(笑)。しかし、このようなプライバシーの問題から、逆に家族の親睦を深める結果になったと聞いています。
また、生活のなかでどれだけ電気を使用したか、電気を集中して利用する時間はどこかといったデータも目視で確認できるので、省エネや節電の意識が高まったという声も聞いています。
創エネハウスは一般の方にも開放しており、事前に申請すれば見学が可能です。見学では当社のスタッフがガイドとなり、2時間ほどをかけて創エネハウスのポイントをご案内します。
- 環境対策は統合以前からの重要課題だった
- エネルギーを効率的に使う発電と給湯がエネファームの魅力
- ガソリンでカーライフと地球環境をサポート
- “省エネ”と“創エネ”の実現を目指す
- 地域社会との交流を深める環境保全
- お客様と一緒に取り組むことが必要