ロシア政府から排出権発行の認定を受けたというプレスリリースを拝見しましたが、それは、何がきっかけなのですか。
前述の「JXエネルギーグループ中期環境経営計画」では、「地球温暖化防止・生物多様性保全策の推進」の具体策として、京都メカニズムの活用を掲げています。
京都議定書で定められた京都メカニズムでは、3つの温暖化ガス削減の方策が認められました。1つ目がエミッショントレーディング(Emission Trading)、つまり「排出権取引(ET)」です。2つ目が「クリーン開発メカニズム(CDM/Clean Development Mechanism)」という、先進国が途上国で環境関連のプロジェクトを実施し、それによって温暖化ガスを削減できた場合、その分の温暖化ガスを“自国(先進国)が削減したこととして認める”仕組みです。3つ目が「共同実施(JI/Joint Implementation)」という、“先進国同士”で排出権取引を行うものです。
当社は、三菱商事株式会社とロシア連邦石油企業大手のガスプロムネフチ社と一緒に、ヤマルネネツ自治区にあるイエティプーロフスコエ油田で随伴ガス回収・有効利用JIプロジェクトを推進してきました。原油の採掘・生産では「随伴ガス(※)」と呼ばれるものが発生するのですが、このガスは揮発性成分に富むことからそのままにすると危ないので、燃焼処理を行う以外に方法がありませんでした。しかし、燃やしてしまうと、どうしてもCO2を排出することになります。
※メタンやエタン、プロパンなどを成分とするガスであり、安全上の理由から一般に焼却処理が行われている。
そこで、当社がコンサルティングを行い、新設したパイプラインにより随伴ガスを回収してロシア国内の家庭や工場でガス燃料などとして有効活用し、温暖化ガスの発生を削減することとしました。これは、2010年7月にロシア政府初のJI プロジェクトとして認定され、2011年1月7日に1回目の排出権約29万トンが発行されました。
当社はベトナムのランドン油田で随伴ガスをパイプラインで回収する技術やノウハウを確立しており、ここで確立した技術やノウハウを使って、ロシアのイエティプーロフスコエ油田での共同実施を実現することができました。
蒸気漏洩(ろうえい)削減による省エネで「資源エネルギー庁長官賞」を受賞したとのことですが、これはどのような点が評価されたのですか。
製油所では、配管で原油や精製した油を輸送しているのですが、温度を下げてはいけない部分には保温材を設置するほかに、蒸気(スチーム)の配管を沿わせたりします。また、タンクのヒーティングにもタンク内に蒸気の配管を敷いて温めたりしています。その際、熱を奪われた蒸気は温水に変わるわけですが、そうなってしまうと暖め続けることはできません。
その配管内にたまった温水を効率よく外に排出する機器がスチームトラップなのです。スチームトラップを長く使っていると、どうしても排水機能が低下してしまい、蒸気漏洩(ろうえい)によるエネルギー損失(熱ロス)が発生します。そこで、この装置を保守管理して正常な状態を保つ仕組みを、スチームトラップのメーカーと一緒に構築しました。
スチームトラップの保守管理は以前より行っていましたが、担当者のスキルに頼っていたため適正な機能診断基準の確立がなされてないことに加え、そもそも当時の旧新日本石油精製株式会社7製油所で約10万台という、人間が管理できる範囲をはるかに超えた設置数が大きな課題となっていたのです。
この蒸気漏洩削減による省エネで、2010年1月に「平成21年度省エネ大賞(組織部門)」の「資源エネルギー庁長官賞」を受賞しました。結果的には約10万台ものスチームトラップを対象に地道に保守管理したところ、原油換算で年間約1.8万キロリットルの省エネに貢献し、CO2排出量としては年間4万6千トンもの削減を達成することができました。
環境への取り組みに関する今後の方針についてお聞かせください。
JX日鉱日石エネルギー株式会社としての環境への取り組みは今後も続けていきますが、当社だけで地球温暖化の防止や環境負荷の低減を実現できるものではありません。当社は石油の精製販売を行っており、お客様が燃料を使用するときにはCO2がどうしても発生してしまいます。そこで、今回ご紹介した家庭用燃料電池エネファームや太陽光発電システムなどの新エネルギーを提供させていただくことはもちろん、その他の環境配慮型の商品を多くの方々に使っていただけるよう努力しなければならないと思っています。
萩尾様
貴重なお時間のなか、取材にご協力いただきありがとうございました。エネゴリくんの森のWebページで私も1クリックしました!
- 環境対策は統合以前からの重要課題だった
- エネルギーを効率的に使う発電と給湯がエネファームの魅力
- ガソリンでカーライフと地球環境をサポート
- “省エネ”と“創エネ”の実現を目指す
- 地域社会との交流を深める環境保全
- お客様と一緒に取り組むことが必要