株式会社みずほフィナンシャルグループ

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社会全体でCO2排出量削減の輪を構築-「<みずほ>エコサイクル」

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株式会社みずほフィナンシャルグループ

CO2排出量「見える化」支援サービスについてお聞かせください。これは、いわゆる電気使用量の見える化のようなものなのでしょうか。

そもそも、多くの方々は「CO2排出量の見える化って何?」と思いますよね。ここでいう「CO2排出量の見える化」とは、工場やオフィスなど社内のエネルギー消費などから直接的に排出されるCO2だけでなく、製品のライフサイクルや、企業のサプライチェーンを通じて間接的に排出されるCO2排出量も含めて算定し、CO2削減につなげようとするものです。環境問題に興味のある方の中には、「LCA(Life Cycle Assessment)」という言葉をご存知の方もいらっしゃるかもしれません。みずほ情報総研では、CO2排出量の見える化手法であるLCAやカーボンフットプリントの研究に早くから取り組んでおり、多くの知見やノウハウを持っています。

製品やサービスに関して、企業が独自に商品ライフサイクルにおけるCO2排出量を把握し、削減対策を実施することは非常に大変なことです。そこで、みずほ情報総研が、把握する範囲や方法、対策などについてコンサルティングという形でお手伝いさせていただいております。

原料調達・製造・販売・使用・廃棄・リサイクルという製品のライフサイクルを通じて、どれほど環境負荷があるのか、あるいはそれをどのくらい低減できているのかを数値で「見える化」し、社内での改善策の検討に活用したり、最終商品に表示などし、お客さまに情報を提供したりします。これにより、企業価値を高めることも可能だと考えています。

例えば、ライオン株式会社様から依頼を受け、同社の洗濯用洗剤の原料である界面活性剤について、石油原料を用いた1990年当時の商品と、植物原料を用いた2006年の商品を比較し、LCA分析によりCO2排出量の削減率を算定しました。同社では、その後も、洗濯用洗剤の新製品プレスリリースにおいて、CO2排出量の削減率を「みずほ情報総研調べ」として公表しています。

このように、最終製品を製造する企業がライフサイクルを通じて排出するCO2の算出への取り組みは以前に比べ進んできました。しかし、中間財を製造している企業(※自動車の部品メーカーなど)は、最終製品の使用段階における自社製品(部品など)のCO2排出量削減への貢献量を把握することが難しく、課題となっていました。例えば、エコカーの省エネ効果は把握できるものの、その中のひとつの部品がどれだけ環境負荷低減に貢献しているかは分かりませんでした。しかし、最終的には最終製品の一部として環境負荷低減に貢献しているので、その部分を「見える化」することが求められてきました。

そこで、みずほ情報総研は、2011年8月から「中間財のCO2排出量削減貢献量算定コンサルティング」というサービスを開始しました。みずほ情報総研が数多くのLCAコンサルティングを通じて培ってきたノウハウを活用し、中間財の調達・販売段階に加え、その先についても一定の算定シナリオを設定し、お客さまにヒアリングをしながら、妥当性の高い算定方法の検討・選定を提案します。データ収集はもちろん、最終製品使用時のCO2排出量削減への貢献をどのように考えるかというロジックづくりが重要となります。

「中間財のCO2排出量削減貢献量算定コンサルティング」の概念図

2011年7月には、「Scope3基準GHG排出量簡易算定サービス」も開始しました。カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP/Carbon Disclosure Project)というものをご存知でしょうか。

お恥ずかしながら、詳細な内容は分かりません……。

「Carbon」ということから分かるように、基本的には気候変動やGHG(Green House Gases/温室効果ガス)に関連した話です。英国のNGOが機関投資家の署名を集め、企業に対して気候変動への取り組みを促すための情報開示プロジェクトのことであり、投資家の視点から企業の気候変動に対する戦略やGHG排出量削減の取り組みに関し、情報開示とパフォーマンスの両面から評価・スコアリングします。その結果は機関投資家が投資をする際に、企業価値を判断する指標のひとつとして活用されます。

近年、環境への取り組みを含めたCSRの観点からの企業の評価結果を、機関投資家が投資の際に参考データとして利用する動きが見られ、これらの評価が高い企業は評価が低い企業に比べて中・長期的には株価が上昇しているという研究結果もあります。このような流れのなか、企業も投資家に対して環境への取り組み状況を開示することが重要であるとの認識が強くなっています。

また、グローバルには企業の社会的責任として求められる範囲が拡大しており、サプライチェーン管理も企業の重要な課題になってきています。そのようななか、企業がサプライチェーン全体のGHG排出量を算定・報告するための国際基準「Scope3」というものが、2011年9月に発行されました。

「Scope3」というのは、企業のGHG排出量の算定・報告の世界的基準である「GHGプロトコル」において定義されている算定範囲のひとつです。「Scope1」はボイラーからの排出など「企業が所有・支配する排出源からの直接排出」、「Scope2」は購買電力の発電時の排出量に当たる「企業が購入するエネルギーに係る間接排出」であり、「Scope3」は「その他の間接排出」と定義され、企業のサプライチェーン全体に相当する範囲に位置付けられています。具体的には、原材料の採掘・生産や輸送、製品の輸送・使用などが範囲に含まれます。

例えば、完成品メーカーでは、上流事業者が製造した部品の納入において輸送で排出されたGHG排出量など、製品の原料から使用・廃棄に至るまでの全行程において、自社が直接的には排出していない部分が「Scope3」です。

「Scope3」概念図

日常生活に置き換えて説明すると、ご家庭でガスを利用すれば、燃焼によってCO2が発生します。これが「Scope1」に当たります。ガスではなく電気を使った場合、CO2は直接的に発生しませんが、電気をつくる段階でCO2が発生します。これが「Scope2」です。そして、例えば、インターネットショップで書籍を購入し、宅急便で取り寄せた場合に運搬のために排出したCO2など、自らの行動に関連して排出されたCO2が「Scope3」に該当します。

現在(※2012年5月現在)、多くの大手企業では「Scope2」まで把握しています。GHG排出量削減は、自社のGHG排出量を把握することから始まります。

次のステップとして、サプライチェーン全体でのGHG排出量を把握し、サプライチェーン上のどこの排出量が多く、どこに削減余地が残っているのか、などを「Scope3」基準で確認・検討することができます。しかしながら、「Scope3」基準の算定対象範囲はとても広く、対応の仕方によっては算定に大きな負荷が発生するという懸念もあります。

そこで、みずほ情報総研では企業のサプライチェーンにおけるGHG排出リスクへの対応方針や、チャンスを生かすための戦略を検討する目的に焦点を絞り込み、必要最低限の範囲・条件でGHG排出量を算定し、対応の方向性を提案するコンサルティングを始めました。

投資家は、企業の環境への取り組みに対して高い注目を示しているのですか。

環境への取り組みは、投資先にとってビジネスチャンスでもあり、リスクでもあると考える投資家も多いようです。リスク管理の観点から、サプライチェーン・マネジメントに取り組む企業も多く、リスクとチャンスをどのようにマネジメントしていくかは、企業にとって課題となっています。

特に欧州では環境に対する規制が厳しく、それに十分に対応しなければならないというリスクの部分と、逆にビジネスチャンスに生かしていくという機会の部分を、しっかりとコントロールできているのかという点が、投資家が中長期的な判断を行うに当たって重視されています。

企業を評価するうえで、トリプルボトムライン(Triple Bottom Line)アプローチという考え方があります。これは、利益などの経済的な結果だけでなく、環境や社会に対するインパクトを含めて判断しなければ、本当の企業の成果を知ることができないということを意味し、企業活動の評価において根付いてきていると言えるでしょう。


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