今回は、紙への印刷だけでなく、ICカードや包装材、ディスプレイ用や太陽電池用の部材など、多岐にわたるビジネスを展開している大日本印刷の取組みをご紹介します。
グループ全体の行動規範のひとつとして“環境保全と持続可能な社会の実現”を掲げている大日本印刷(以下DNP)。印刷用紙や包装材の原材料の調達から、製造や配送、さらに廃棄に至るまで、すべての工程を通じて環境保全を目指すだけでなく、本社や工場周辺の緑地・生物多様性の保全にも取り組んでいます。大日本印刷株式会社 CSR・環境安全部 部長 森 浩二氏と同 CSR・環境安全部 鈴木 由香氏に詳しくお話をうかがいました。
DNPは、紙やプラスチックなどの原材料調達や、全国各地にある工場での生産など、自然や環境問題と密接な関係があると思うのですが、環境保全のために行っていることはありますか?
森氏:一番大事にしていることは、「CO2を○%削減しよう」「廃棄物ゼロを目指そう」といったグループ全体での目標をしっかりと定めて活動していくことです。当社では5年ごとに見直していまして、2016年の3月に2020年度に向けた目標を掲げたところです。
国内には70近い製造拠点があり、それぞれ製造しているアイテムや使用する機器が違うので、各工場の状況に合わせた目標も設定し、各工場で管理しています。
一つひとつの工場に、それぞれ違った目標を伝えていくのは難しそうですね。
森氏:本社に環境委員会を設けて、まずはその中で全社目標を決めています。同じように各工場にも環境委員会を設置し、本社から工場へ目標を伝えていく形にしています。その際に、各工場に合わせて内容を検討していきます。
グループ全体で目標を共有できる仕組みが作られているのですね。では、目標達成のため、これまでに行ってきた取組みを教えてください。
森氏:我々のような製造業において、工場における環境負荷の削減は注力すべき課題です。そこで、空調や動力の面で省エネルギーの設備を導入し、CO2の削減を目指しました。
鈴木氏:製造ラインのエネルギー使用状況もデータ化し、ロスを減らすという取組みも実施しています。実践して効果のあった事例は他の工場にも広めていくのですが、スムーズに展開するため、年に1回、CSR・環境安全部のメンバーが全国の工場を回っています。「エコ監査」と呼んでいる視察で、目標に向けて活動しているかチェックしたり、他の工場の事例を紹介したりする機会にしています
海外にも工場がありますが、国内同様に現地に赴くこともあるのですか?
鈴木氏:頻繁に行くことは難しいので、現地のスタッフと密に連携し、エリアを決めて2年に1度くらいの頻度で行くようにしています。
各工場の設備や取組みの見直し以外に、注力していることはありますか?
森氏:製造業としては、原材料の調達や製造、製品の配送、廃棄までのすべての工程で、包括的に環境負荷の削減に臨まないといけないと思っています。例えば、サプライチェーン全体で工程ごとにCO2の排出量を算出したところ、「原材料・資材の製造」だけで全体の50%以上を占めており、用紙調達に起因する排出量が多いことが分かりました。環境負荷の大きさ、生物多様性保全の観点からも、重点的にフォローすべき領域として活動を進めています。具体的には、サプライヤーさんとの取引基準や調達用紙の基準を示した「印刷・加工用紙調達ガイドライン」を制定しています。サプライヤーの皆さんにガイドラインの説明会を行い、関係各社の意識と理解の統一を図り、協力体制を構築しています。
鈴木氏:提案をしっかり伝えるためにも、サプライヤーの皆さんと直にお話しすることを大事にしています。用紙の原材料調達について、どのような方針を持ち、どこの原材料を使い、どういった方法で調達・加工しているのか。直接話すことで意思の疎通を図り、環境に配慮しているかどうか確認を進めています。現在、サプライヤーさんと積極的に面会し、「印刷・加工用紙調達ガイドライン」適合品の調達比率100%を目指しています。
御社の各工場だけでなく、サプライヤーの方々とも細やかにコミュニケーションを取られているのですね。
森氏:社内の環境負荷削減について、大きな設備を入れてCO2や廃棄物を削減できるところは、ほぼすべての工程において対応策を講じてきました。あとは人の手で地道に削減し、またサプライチェーンでの連携を強化していくことが重要だと思っています。
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