インサイトの「エコアシスト」についてお聞かせください。
車の購入や運転において、燃費がいいかどうかが気になるかと思います。運転によって、カタログなどに記載されているスペックよりも実際には燃費が悪くなる場合もあります。長い距離を走っていなくとも、坂道やカーブの多い道を走行することで、燃費も変わってくるわけです。
インサイトの「エコアシスト」には、「インサイトは燃費面で確かに優れているのですが、それは正しい運転をした上でのことですよ」ということを、知らず知らずのうちにお客様に覚えていただくという考え方がベースとしてあります。単にエコアシストをつけているというだけではないのです。
正直なところ、インサイトは届出燃費(10・15モード)に関していえば、特に優れているというわけではありません。シビックハイブリッドの燃費が31.0km/ℓであるのに対し、インサイトは30.0km/ℓなのです。他社の代表的なハイブリッドカーでは、38.0km/ℓという燃費です。確かにインサイトのモード燃費は30.0km/ℓなのですが、実は研究所内では実用燃費の向上に力を入れています。38.0km/ℓの燃費のハイブリッドカーといっても、普通に運転していれば20.0km/ℓを超える平均燃費というのはなかなか出ないはずです。
実はインサイトでは、実用燃費をよくするように研究・設計がなされています。実用燃費の研究はなされているものの、それとは別に燃費のよい運転技術というものがあります。燃費のよい運転の仕方を、お客様がゲーム感覚で覚えてもらえれば、思っていたよりも燃費が悪いというズレをなくすことができるはずです。上手な運転をすれば驚くほど燃費に差が出てくるということをエコアシストで知ってもらえれば、お客様も運転の仕方に気をつけるようになるのではないかという狙いがあるわけです。
現在(2009年8月末時点)、2代目インサイトはすでに6万台以上も購入していただいております。単純計算すれば、約6万人のお客様がインサイトを運転しているのです。その全員は難しいとしても、ほとんどの方がエコアシストに感動し、上手な運転をしていただけるようになれば、日本で走っている車の多くがハイブリッドに変わり、ガソリンの使用量の減少につながります。最終的には、CO2の削減に結びつくわけです。そのため、エコアシストとはいうものの、その根底に流れる思想はとても価値のあるものなのです。
「エコグランプリ」という、F1で有名な貴社ならではのサイトがありますね。
エコドライブをよりゲーム感覚で身につけてもらうために、「エコグランプリ」というサイトを開設しております。「エコグランプリ」は、インサイトのオプションとしてHDDインターナビシステムを搭載し、「インターナビ・プレミアムクラブ」にご入会いただいているオーナー様向けのサイトです。自分が運転するインサイトの燃費を全国で競うというもので、「個人燃費ランキング」と「県別燃費ランキング」が表示されます。
ただ面白いだけではなく、CO2を削減していくこと、燃費のいい車を運転すること、ハイブリッドカーに乗ることと同時に、お客様の側で環境に対する意識に目覚めてくれればと思っています。「エコグランプリ」をひとつのムーブメントとしたいですね。
エコアシストの「コーチング機能」や「ティーチング機能」についてお聞かせください。
「ライフサイクルアセスメント(LCA=Life Cycle Assessment)」において、車の製造時に排出されるCO2の量というのは微々たるものです。車というのは、1年ほどで乗り換えるのであれば別として、数年もの間(5年~10年)乗り続けるという場合が普通でしょう。そう考えた場合、走行時に排出されるCO2のほうが圧倒的に多いのです。そして、実際に何年も走り続けるユーザの方々がエコに対する関心を持つようになれば、かなりの量のCO2を減らすことが可能なはずです。
私は普段バイクに乗っているのですが、仕事では社用車のインサイトに乗ることもあります。インサイトのエコアシストのなかに「コーチング機能」というものがあるのですが、エコドライブを行っていればアンビエントメーターの色がグリーンに、急な加速や減速を行うとブルーに換わります。インサイトに乗っているときにメーターの色がブルーだと、環境に悪い運転をしているなと反省してしまいます。
また、インサイトのエコアシストの「ティーチング機能」では、運転終了後にエコドライブ度(ecoスコア)を診断し、環境にいい運転であればリーフ(葉)のアイコンの表示が多くなり、上達するにつれて3段階にステージアップしていきます。逆に、無理な運転をすればアイコンの表示が少なくなり、成長度も下がっていきます。このアイコンを見ると、エコドライブを行って育ててあげたいという気持ちになりますね。
私の前にインサイトに乗っていた社員が、エコドライブ度でリーフのアイコンを4.5枚(最大5枚)も表示させているのを見ると、これは超えなければというように燃えてきます(笑)。インサイトのドライバーにもこのような意識を持っていただければ大成功であり、結果的にエコドライブにつながります。さらに「エコグランプリ」に登録すれば、エコドライブに夢中になってくれるはずです。楽しさや面白さを交えつつ、ユーザをエコドライブの方向に持っていくことができればと考えています。
篠原様 安藤様
貴重なお時間のなか、取材にご協力いただきありがとうございました。
後編では、新型燃料電池車「FCXクラリティ」や、販売予定のハイブリッドシステム搭載車にも触れていきます。お楽しみに!
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