「ハウス食と農と環境の体験教室」というのを実施していますね。
当社では、2009年から「ハウス食と農と環境の体験教室」というものを実施しており、兵庫県の西宮市で行ったのが最初となります。当時から、各地域のNPO法人さんと一緒に取り組み、西宮市では「NPO法人こども環境活動支援協会(LEAF)」さんと体験教室を実施しました。同NPO法人は子どもたちが行う環境活動を応援しており、“農業を通じて環境体験をしよう”という考え方を持っています。
私自身が同NPO法人と話し合いをするなかで、“農業を通じて環境体験をしよう”に“食”を加えることができないかということで、「ハウス食と農と環境の体験教室」が誕生したのです。
今年(2011年)で3年目となりますが、北は北海道札幌市から南は福岡県糟屋郡新宮町(かすやぐんしんぐうまち)までの9ヵ所に実施エリアを拡大しています。新しい実施エリアとしては、今年の秋から東京都練馬区でもスタートします。2010年の体験教室では64家族、延べ218名の方々に参加していただきました。
農業というのは日本の将来的な課題のひとつであり、自然環境を感じてもらうには農業の体験を通じてもらうことが一番の方法だと思います。「ハウス食と農と環境の体験教室」では無農薬栽培を実施し、田植えや稲刈りは昔ながらの方法である「人の手」によって行います。
先述したように、農業を通じて食の大切さと自然環境の大切さを学んでいただくのですが、その土地に生息する生物の観察も行っています。生物がそこにいること、つまりは生態系の意味を理解してもらい、実際に自然を肌で感じてもらえればと考えています。
「ハウス食と農と環境の体験教室」では、年3回から4回、家族単位で参加していただいており、多いところになると年6回ほど実施されています。春に田植えを行って、夏には稲の成長に必要な草取り、秋に稲刈りをして、最後にお米として食べるまでトータルに体験していただきます。“その日限り”の体験ではなく、農作物の世話や管理を実際に行うことで、農作物の生長過程における変化や苦労、自然環境が人間に与える影響の大きさを感じていただきたいですね。
体験教室がスタートしたころは年1回の実施だったのですが、それでは楽しかったという思い出だけが残り、学習にはならないと考えていました。重要なのは、“四季を通じて自然環境を感じる”ことであり、体験教室によって農作物を“育てること”、天候・土壌・水といった“自然の大切さ”が分かるのです。子どもたちに、農作物がどうすれば育つのか、どうして日光や水が必要なのかを含めて、農業と食の大切さを知ってもらいたいと思います。
食品と環境は密接な関係があり、環境がよくないと食品の安全を守ることはできません。ご家族で参加してもらうことにより、お子さんだけではなくご両親も環境について理解し、それをお子さんに伝えていただきたいという狙いがあるわけです。
参加した方々からの反応はどうですか。
体験教室後にアンケートを実施し、必ず感想をいただいております。それを見ると、皆さんとても喜んでおられるようです。なかには昨年と翌年に続けて参加されているというご家族もいます。ただし、できる限り多くの方に参加していただきたいと考えており、やむを得ずお断りする場合もあります。
西宮市の体験教室に参加された方々では年に1回集まり、オフ会のようなことをなさっているようで、強い絆も生まれているそうです。
今後も体験教室の実施エリアは拡大していくのですか。
地元の方々とのコミュニケーションが重要と考えているため、基本的には、当社の支店や営業拠点があるエリアで実施しています。来年以降はエリア拡大も検討しますが、内容の充実と積極的な宣伝活動に力を入れていく予定です。
各エリアでは無農薬栽培を行っているため、多様な生物を観察することができます。この体験教室では専門家の方をお招きし、生息する生物の説明をしていただいているので、生物多様性の勉強をするには最適な環境といえるでしょう。専門家の方によると、実施エリアによって異なりますが、集中して探せば300種類ぐらいは見つけることができるそうです。
「環境」と「食」と「農」の3つを学ぶことは、体験教室のプログラムに必ず含まれています。さらなる環境関連の参加型イベントについては考えていかなければなりませんが、現状ではほかに企画しているものはなく、まずは「ハウス食と農と環境の体験教室」をメインに行っていきます。当社ではどうしても「食」という部分がありますので、それを踏まえて環境への取り組みを進めていく必要があるでしょう。
なお、東京本社や各事業所では環境コミュニケーションの一環として、全社員がボランティアとして周辺地域の清掃活動を行っています。従来から展開していた活動ですが、2008年からは全社的な取り組みになることが決まり、2009年度には全支店や全工場、研究所、東京・大阪両本社でも実施され、さらには営業所やグループ会社でも取り組みが広がっています。
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