社内でもCO2排出量削減の取り組みなどを行っていますね。
ハウス食品では、大阪本社において昨年(2010年)6月にデマンドモニタを設置し、今年に東京本社にも導入されました。このデマンドモニタは、当社の工場ではすでに導入されています。これにより、ビルの電力使用量を「見える化」することで、パソコンの画面で電力の使用状況をリアルタイムで把握することが可能です。また、電力使用量の増加が予想される場合には、空調設備のコントロールなどにより節電化を図ります。
照明のLEDへの切り替えについては、現状でようやく50%ほどが完了となっています。まだ100%となっていませんが、2010年度には約400ヵ所の切り替えが完了しており、できる限り早く進めていく予定です。東京本社ビルの各フロアやエレベーターホール、トイレ、食堂などの照明については順次切り替えを行っています。そのため、今回の国の節電対策により15%の削減が必要でしたが、照明のLEDへの切り替えにより20%から30%もの削減を実現しています。
ほかにも、各フロアではゴミの分別も行っています。基本的に、当社のオフィスでは個人のゴミ箱はなく、社員全員が共用のゴミ箱に持っていき、各自できちんと分別を行うように徹底しています。また、当番制により社員が1日分のゴミの量を測っています。その量を記録し、どのようにすればゴミを減らすことができるのかを検討中です。
環境への取り組みに関する今後の方針についてお聞かせください。
当社の一番の問題は、サプライチェーン・マネジメント(Supply Chain Management)でしょう。正直なところ、原料調達においてどれほど環境配慮ができているのか、明確にいうのは難しいですね。
スパイスなどの細かな原材料を様々な場所から取り寄せなければならず、現地の畑などに定期的に訪問してはいますが、そこの環境配慮までには手が回っていない状況です。今後それをどうしていくべきかというのが、当社の大きな課題です。
一部ではグリーン調達などを行っていますが、委託している外部の協力会社や取引先とともに、どれだけ環境に配慮した活動ができるのかも課題といえるでしょう。今後どのように展開していくか、試行錯誤を重ねているという状況です。
CO2排出量を削減していくことはもちろんですが、それとは別に各部署が仕事のなかで環境問題にどのように取り組んでいくべきかという点も重要です。例えば営業の部署であれば、環境をテーマにした販促活動がないのか、スマートクッキングを合わせて環境に配慮した売り場づくりができないかというように、様々なアプローチが可能だと思います。このように各部署が、仕事のなかに環境というテーマを盛り込むことができるのかを考える、これこそが、照明のLED化やゴミの分別などのCO2排出量削減の取り組みから、次のステップへ進むことのできる近道ではないかと思います。
他社さんでは、環境の部署では熱心に取り組んではいても、社員の意識として浸透してないというお話を聞くこともありますが、当社ではそのようなことはなく、社員それぞれが電気をこまめに消す、エコドライブを心がけるなど、積極的に取り組みを進めています。例えば、営業用の車両に乗る社員に、自分が運転したときの燃費と走行距離がどれくらいか分かるかと聞いてみると、驚くことにみんなきちんと覚えていますね(笑)。
ほかにも、営業用の車両自体をハイブリッドカーへ切り替える、カーシェアリングを行うなど、CO2排出量の削減を意識した活動に努めています。例えば、仙台支店の管轄には青森県・岩手県・秋田県がありますが、各エリアに向かうには電車などの公共機関を使います。そして、現地で営業車を運転するというような取り組みを行っています。環境に優しいだけでなく、社員の安全や健康にもいいといえるでしょう。もちろん、東京や大阪などの都心部の営業では、公共交通機関の利用を推奨しています。
ハウス食品ではISO14001を取得して3年が経過し(※2011年9月現在)、再認証という段階です。内部環境監査員も80人ほどおり、環境活動を推進する体制もしっかりと構築されています。そのため、当社において環境に対する意識は全社員に浸透しているといえるでしょう。全社員に環境に対する意識が浸透しているという意味では、ISO14001という“ツール”を現状ではうまく活用できていると思っています。
今回の東日本大震災を経験して、緊急避難時における環境問題をどのように把握するべきか、社内でも議論を行いました。自然環境において最悪の事態であるといえますが、それよりも、まずは復旧・復興が大きな課題だというのは間違いのない事実です。その点を踏まえて、今後の環境への取り組みを考える必要があります。
池本様
貴重なお時間のなか、取材にご協力いただきありがとうございました。貴社の「温めずにおいしいカレー」は画期的な製品だと思います。
- 安心・安全と環境配慮とのバランス
- 容器や包装の工夫で環境負荷を低減
- 新たな切り口の環境配慮製品-「温めずにおいしいカレー」
- 「食」という視点から環境配慮の情報発信
- 「環境」と「食」と「農」を学ぶ-「ハウス食と農と環境の体験教室」
- 仕事のなかにどのように環境というテーマを盛り込むか