カゴメ株式会社

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環境方針の要となる4つの柱

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カゴメ株式会社

生鮮トマトの栽培で、受粉に使用している蜂を切り替えたとのことですが。

現在、生鮮トマトの栽培において、受粉には在来種のクロマルハナバチを使っています。以前は、外来種のセイヨウオオマルハナバチを使用していたのですが、生物多様性という言葉が注目される前に、当社では積極的に切り替えを進めました。

凛々子は露地栽培だとお話ししましたが、生鮮トマトの場合は温室で栽培するため、受粉に必要な風が吹きません。そのため、何らかの受粉を手伝ってくれる存在が必要です。そこで、受粉の媒介者として蜂を使っているわけです。

持続的・継続的に菜園事業を行うためには、環境への影響を考慮することが重要ということで、2004年5月から全国3カ所の大型温室では、在来種のクロマルハナバチへの切り替えを行いました。当時は、日本の農業でそこまで取り組んでいたケースはなく、当社では社会的に問題となる前に積極的に切り替えたのです。現在、トマト以外にイチゴなど、さまざまな農作物の受粉においてもクロマルハナバチが使われるほどスタンダードになっています。

外来種のセイヨウオオマルハナバチは、環境に大きな影響を与える恐れがあるのですか。

セイヨウオオマルハナバチは、問題を引き起こす可能性がある特定外来生物の候補に挙がっていました。“引き起こす可能性がある”と述べているように、明確に環境にどのような影響を与えるのか分からないので、リスクの可能性があるものはやめようというわけです。一度生態系に広がったり、在来種の中に遺伝子が組み込まれたりしてしまうと、取り除くことが容易にはできなくなってしまいます。

閉鎖された空間である温室菜園の中で、受粉のためだけに使うわけですが、逃げないという保証はありません。仮に逃げた場合、生態系にどのような悪さをするかは正直、全く分かりません。大きな影響があってから元に戻そうとしても無理な話です。

このように、当時の考え方でもすでに生物多様性の保全を実践していたわけです。

貴社の研究所では、遺伝資源の活用にも取り組んでいるそうですね。

当社研究開発本部では、優良なトマトの品種の開発・育成のために、多くの品種の収集や交配を重ね約7,500種類ものトマト遺伝資源を保管しています(※2013年8月現在)。これは、民間企業では世界有数規模の保管数です。

保管しているものには、ペルー原産のトマトの原種や、色、形、味などバラエティ豊かな多くの品種もあります。これだけ多様なトマトの種子を保管していることから、ジーンバンク的な役割も果たしています。そのような意味で、生物多様性の保全に貢献しているとも言えるでしょう。

なお、余談ですが、約7,500種類ものトマト遺伝資源である種子は、ただ保管するのではなく、生きている状態を保つには定期的に入れ替えることが必要です。

種子が生きている状態を保つとはどういう意味なのですか。種子の状態であれば、ずっと保管できるようなイメージがありますが。

種子が生きている状態とは、「発芽できる状態」ということです。種子というのは、年数が経つと発芽率が落ちてしまうのですが、発芽率が高いフレッシュな状態を保つのは一般的には20年が限度と言われています。そのため、定期的に年間で300種類から400種類もの種子を入れ替える必要があるのです。このような地道な取り組みも当社では行っています。

また、さらにおいしいもの、栄養価値の高いもの、病気に強いもの、トマト生産者や製造においてメリットをもたらすものといった、特徴のある品種の改良に取り組んでいます。

貴社の研究所では、品種改良の研究も行っているのですか。

品種改良には長い年月がかかりますが、当社研究員が遺伝子組み合わせでなく交配によって最適なトマトをつくり出しています。 例えば、生食用の約3倍のリコピンを含む加工用トマトや、収穫時に収穫負担を軽減し、生産時に異物の混入リスクや廃棄物を削減するジョイントレス(※)トマトなどがあります。

※普通トマトはヘタの付いている場所のすぐ上に節(ジョイント)があって、そこからヘタごとに取れるのだが、ジョイントレストマトではこの節がなく(ジョイントレス)、もぎ取るとヘタが実に付いてこないよう改良されている。


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