容器包装における取り組みもなさっているようですが、そちらについてお聞かせください。
代表的なものは、マヨネーズボトルの軽量化への取り組みです。2000年以降、10%から15%の軽量化を実現しています。
マヨネーズは酸素に触れると、植物油の酸化が進み、風味が落ちてしまいます。そのため、マヨネーズボトルには中身を酸素から守る役割が求められます。当社のマヨネーズボトルは、ポリエチレン層の間に酸素を透過しにくいプラスチックの層を挟んだ、ミルフィーユのような多層構造になっています。マヨネーズの酸化を抑える機能を保ちつつ、いかに容器を薄く、軽くするかが難しいところなのですが、今後も改良を重ねていきたいと考えています。
容器包装における工夫のなかで、お客様にご好評いただいているのが“はがしやすいラベル”への取り組みです。通常、ビンをリサイクルするためには、ラベルをきれいにはがして資源ごみとして出してもらう必要があります。しかし、このラベルがきれいにはがれなくて困ったご経験がある方も多いと思います。
当社では、ゴミの分別時のストレスを少しでも軽減したいという想いから、はがしやすいラベルをドレッシングとアヲハタジャムで採用しました。一度このはがしやすさを経験すると、はがすのが楽しみになるというお客様もいるほどです(笑)。
当社は、使いやすさも商品の品質のうちと考えており、はがしやすいラベルをはじめとした、ユニバーサルデザインへの取り組みに注力しています。
最近の例では、2010年からドレッシングに採用した「ヒネルキャップ」が使いやすくなったという評価をいただいております。「ヒネルキャップ」は、新しい構造を採用した中栓で、力の弱いご年配の方などでも容易に開けることができ、液はねの心配もありません。
一般に、ドレッシングのフタを取ると指で引っ張って開けるタイプの中栓がついているかと思いますが、「ヒネルキャップ」を採用した商品では、一度「カチッ」と音がするまでキャップを締めこんでから開けてみると、中栓がキャップについた(取り込まれた)状態になります。もちろん、ビン側に残った中栓も商品を使い終わったら簡単に取り外せるようになっており、はがしやすいラベルと合わせてビンをリサイクルしやすいように工夫しています。
容器のリサイクルも行っているそうですね。
マヨネーズボトルの、口部のリサイクルを行っています。マヨネーズボトルは、容器メーカーから当社工場まで異物の混入を防ぐために密封状態で届き、マヨネーズを充填(じゅうてん)する直前に口部をカットします。このカットしたボトルチップ(口部チップ)は廃棄物となってしまうのですが、当社では以前よりこの部分を何か利用できないかと考え、リサイクルをスタートしました。
現在は、「オープンキッチン(※)」にお越しいただいた方にお配りするお土産袋や、社員証を入れるカードケースにリサイクルされています。お土産袋はボトルチップ2個分、カードケースはボトルチップ1個分を使っています。
※キユーピーでは“工場は家庭の台所の延長”という考えのもと、工場見学のことを「オープンキッチン」と呼んでいる。
さらに、今年(2012年)はボトルチップ5個分を使用した「救ピーオープナー」をつくりました。
「救ピーオープナー」は、緊急時や危険時などに自分の居場所を知らせるホイッスルと、ペットボトルや缶飲料のフタを簡単に開けることができるオープナーの機能を持った災害用グッズです。きっかけは、東日本大震災でした。被災地の様子を見て、暗いなかで危険を知らせる合図や、寒くて手が思うように動かない場合でも飲料製品のフタを開けられるオープナーがあれば便利ではないかと考えました。
丸い部分はペットボトルのフタにはめて、ホイッスルの吹き込み口部分は缶飲料のプルタブに差し込めば、力を入れなくても楽に開けることができます。
これらはほんの一例ではありますが、リサイクル品をつくることで消費者に対する訴求はもちろん、従業員への啓蒙活動にも役立てています。身近に使うことができて、しかも使う人が環境問題を意識するようなものという観点で考えていきたいと思います。
包材についても工夫されているのですか。
そうですね。容器メーカーさんと協力しながら、従来と機能はそのままに、環境に配慮した素材を採用する取り組みも進めています。
具体的には、キユーピー マヨネーズ50グラムの外装フィルムにポリ乳酸を使っています。ポリ乳酸は、トウモロコシやサツマイモから抽出した糖質を乳酸発酵させ、それを化学的に重合(じゅうごう)してつくられた素材で、プラスチックの代用品として期待されています。こうした、植物由来の素材を取り入れることで、化石原料である石油資源の使用量を抑えることにつながります。今後は、ほかの商品への採用も検討していきたいと考えています。
これ以外にも、パスタソースの包材にアルミレスパウチを採用する、料理用ソースの缶にタルク(※)を採用するといった取り組みもしています。
※タルク(TULC)は、製造時に排出されるCO2の量が従来の缶と比較して少なく、しかも水を汚さずに形成できる。
- それは「卵の殻を何かに使うことができないか」から始まった
- 卵には無駄なところなんてない
- 容器包装における工夫とリサイクル
- 食べきれずに捨てられてしまう野菜をなくしたい
- 環境負荷低減の追求と付加価値の提供