続いて、缶のリサイクル化や軽量化についてお話しください。
缶は、リユースするビールびんのように当社に戻ってくるわけではありません。そのため、空き缶を、いかに効率よく回収してリサイクルしていくかが課題です。アルミ缶に関しては、自治会や子ども会などの団体による集団回収や、店頭回収、自治体による分別回収などのルートで回収されています。
アルミ缶というのはボーキサイトという原料(鉱石)から製造されています。ボーキサイトからアルミナ(酸化アルミニウム)を抽出し、そのアルミナからアルミニウムを製造するのですが、新しいアルミ缶を作るためには大量の電気が必要となります。
ボーキサイトから新たな地金を作る場合と比較して、一度使用されたアルミ缶から再度製造するほうが、実は電気の使用量はわずか3%で済むのです。要するに、97%もの電気を節約できるわけです。
キリンビールでは、アルミの使用量を削減する狙いから、軽量びんと同様に缶の軽量化の取り組みを進めてきました。以前から缶の胴体を薄くすること(薄肉化)は行っているのですが、現在の缶は髪の毛くらいという限界の厚さにまでなっています。
そこで、厚みがある缶ブタについて、その口径を小さくすること(縮径化)を行っています。縮径化によって、アルミの使用量を減らしているわけです。
アルミ缶の口径は「209径缶」から「206径缶」、そして「204径缶」へと変わっているのですが、初期のカンと比較して、現在では26%もの軽量化を実現しています。
ちなみに、これは環境に関する話ではないのですが、アルミ缶の縮径化により缶の縁が胴体と比較して面積が小さくなり、飲み口の位置が内側寄りになるため、中身が飲みにくくなるという問題がありました。そこで、ビールで採用している「204径缶」では、1996年ごろから広口缶という横幅が広く開く、飲み口にはディンプル(窪み)加工を採用した形状へと変更しています。
お客様の利便性の確保という意味で、形状の変更を行っているわけです。
昔は缶というとスチールが主流だったかと思いますが、なぜアルミにシフトしていったのですか。
例えば缶コーヒーなどの清涼飲料に使われる缶は、フタ・胴体・底に分かれる「3ピース缶」と呼ばれるものです。発泡性のあるビールを詰めた場合には、3ピース缶でなく胴体と蓋の2ピース缶でも上下の積み重ねにも絶えられる強度が得られることから、缶が軽量化できる2ピース缶で、しかもより軽いアルミ缶になっていったのではと思います。
環境負荷の小さいアルミ缶容器というものがあるそうですが。
当社のホームページで説明している環境負荷の小さいアルミ缶容器には、“缶から缶にリサイクルされる割合が高いこと”と、“「ラミネート缶」を採用していること”という2つの意味があります。
自社で製造した缶について、資源として回収しようという取り組みをされている製罐メーカーには、当社からも回収資材の提供などの側面支援をしているのですが、缶から缶にリサイクルされる割合(※「CAN to CAN」と呼ぶ)が高いという意味で、環境負荷の小さいアルミ缶容器として紹介しているのです。
また、缶の製造では平らなアルミ板を打ち抜き、理科の実験で使うシャーレのようなものをつくり、その縁の部分を引き伸ばしていきます。この成形過程で切れてしまうことを防ぐために、缶製造では一般に潤滑剤を使うのですが、最終製品の缶としては、この潤滑剤を取り除くための洗浄工程が必要になります。
そこで、平らなアルミ板のときに内外面にPETフィルムをコーティングし、それを潤滑剤の代わりとして引き伸ばして成型したものがラミネート缶です。製缶における洗浄工程をなくすことで、環境負荷の削減を実現しています。
そのような「ラミネート缶」を、現在「キリン クラシックラガー」や「淡麗グリーンラベル」などの製品で使用しています。
缶製品を入れる外箱の部分でも、環境に配慮した取り組みをなさっているそうですね。
外箱については、「コーナーカットカートン」の開発を挙げることができます。「コーナーカットカートン」とは、段ボールカートンの四隅を切り落として角を面にした八角形の箱で、運びやすさや取り扱いやすさを向上させるだけでなく、省資源と損壊リスクの低減も実現させています。
従来の外箱は四隅を切り落としていなかったので、角が面になっていなかったのですが、実は面を設けることにより高い強度を保つことができるのです。
また、高い強度により紙の厚みを変えることができ、紙の使用量も従来と比較すると2%ほど減少しています。
「コーナーカットカートン」は、缶ビール以外の製品でも採用しているのですか。
250ml缶・350ml缶・500ml缶のビールや発泡酒、チューハイなど、輸入製品を除いた当社の全製品の外箱に「コーナーカットカートン」を採用しています。当社の代表的な製品である「キリンチューハイ氷結シリーズ」の外箱も、「コーナーカットカートン」を使っています。
氷結シリーズの缶は、独特の加工がなされたデザインを採用していますね。
氷結シリーズのRTD(※)の缶は、「ダイヤカット缶」と呼ばれているものです。缶を開けると、内圧が解放されて表面にダイヤ形状の凹凸が現れます。ダイヤカットで用いられている三角形の形状は、実はNASA(アメリカ航空宇宙局)で高速飛行体の胴体を強化する研究から誕生した技術を応用されています。ダイヤカットの凹凸により、滑りにくく持ちやすい缶を実現しています。
※RTD=「Ready To Drink」の略称であり、購入してそのまま飲むことのできる缶やペットボトル飲料を意味する。
ちなみに、NASAではダイヤカットを開発するに当たり、「ミウラ折り(※)」という日本の折り紙の技法を参考にしたそうです。
※ミウラ折り=東大名誉教授で、宇宙科学研究所(現宇宙航空研究開発機構)の三浦公亮氏が考案した折りたたみ方法。市販されている地図の折り方によく採用されている。
同グループ、キリンビバレッジ株式会社さんの缶コーヒー「FIRE(ファイア)」シリーズの一部でも、ダイヤカットのデザインが採用されていますね。
「FIRE(ファイア)」シリーズのRTDはスチール缶であり、ダイヤカットといっても、主に缶の胴体の上半分のみに採用されているのですが、氷結シリーズの場合は、缶の胴体全面に加工がなされているという違いがあります。
- キリンビールの環境の取り組み‐4つのテーマ
- 製造業では初のエコ・ファースト企業に認定!!
- 環境負荷の少ない容器の開発(びん)
- 環境負荷の少ない容器の開発(缶)
- おいしいビールはきれいな水から‐水の恵みを守る活動
- ビールの泡から生まれたマスコットキャラクター「エコジロー」