貴社の代表的な製品を挙げるならば、やはりポテトチップスです。その生産でも環境に配慮なされているそうですが、そもそもポテトチップスはどのようにしてできるのですか。また、生産の各段階でどのような環境配慮がなされているのですか。
例えば、北海道の空知郡南富良野町には「シレラ富良野工場」があるのですが、同工場はJA富良野さんとの提携により稼働しています。そこで当社のポテトチップスがつくられているのですが、どうしても環境負荷がかかってしまいます。
そこで、南富良野町が有している町有林では、除伐・間伐・下刈り・植栽などによる森林の整備を行っています。これが、「湖池屋の森」という、北海道がコーディネーターとなり道内の森林整備を進める「ほっかいどう企業の森林づくり」を利用した取り組みです。森林を健全に育てていくためには、定期的に間伐して適正な本数を残し、日光が差し込むような状態にしなければなりません。それによって下草が生え、さまざまな生態系を育む基盤となるわけです。
このように、「湖池屋の森」とはシレラ富良野工場で製品づくりの際に発生する環境負荷を、森林整備という形で軽減する取り組みです。「湖池屋の森」の詳細については、後述します。
シレラ富良野工場以外に、自社工場が全国に3つある(※)のですが、それらではリサイクルという形で環境配慮の取り組みを進めています。
※京都府南丹市に1工場、埼玉県加須市に2工場。
各工場で省エネ対策を行っているのはもちろんですが、ポテトチップスができるまでにはさまざまな廃棄物が発生するため、それらについて可能な限り再生利用しています。ポテトチップスの生産時には、芋皮などの植物性残さ、原料のじゃがいもに付着する土砂、品質基準に満たない割れや焦げのあるポテトチップス、じゃがいもの洗浄で排出されるでんぷんなど、食品廃棄物や中間生成物が発生します。それらについて、リサイクルできるような形で進めています。
具体的に、どのようなものにリサイクルされるのですか。
原料となるじゃがいもは、当社では産地からそのまま送られてくる、土砂が付着したものを使用しています。そのため、工場ではじゃがいもに付着している土砂を洗浄するのですが、それを乾燥などの処理を経て培養土などにリサイクルしています。
洗浄されたじゃがいもは皮むきやスライスを行うのですが、その際には芋皮や芋片などの食物残さが発生します。芋皮については発酵させて有機肥料に、芋片は乾燥させて飼料として再利用しています。
スライスしたじゃがいもの表面にはでんぷんが付着しているのですが、その状態のまま油で揚げるとポテトチップスの焦げの原因となります。そのために洗浄を行うのですが、浄化設備によって洗浄後に水と分離させたでんぷんを乾燥させて、養魚の飼料などに生まれ変わらせています。
じゃがいもは、スライスした後に油で揚げること(フライ)を行うのですが、自動選別機と人の目によって、規格外のものや焦げたポテトチップスなどは厳しく選別されます。これらの商品として出すことのできないポテトチップスに関しては、粉砕・圧縮されて油分と固形物に分けられます。油分は工業用石鹸に、固形物は飼料に使用しています。
ポテトチップスは味付けを行った後、包装されてようやく製品として完成します。パッケージに用いられるフィルムのくずは、そのまま捨てればゴミとなるわけですが、破砕・圧縮固化して固形燃料(助燃材)として使用されます。
包材が固形燃料になるとは意外ですね。
包材も一つひとつは薄いフィルムなのですが、固形燃料(助燃材)としてしっかりリサイクルできるものなのです。
コイケヤポテトチップスが、なんと発売50周年を迎えたそうですね。
当社では、1962年(昭和37年)8月23日にポテトチップスの発売を開始したのですが、2012年8月23日で発売50周年を迎えました。当社は国内初のポテトチップスの量産化を実現したパイオニアであり、この8月23日は「コイケヤポテトチップスの日」として、日本記念日協会に認証されています。なお、最初のポテトチップスは「のり付き塩味(※現在の「のり塩」)」でした。
記念日があるとは驚きました(笑)。発売当初のポテトチップスは、現在のものとは異なるのですか。
現在のポテトチップス用のじゃがいもは、加工に適した専用品種を使用しているのですが、それはお店で普通に買うことのできるもの(※)とは異なります。専用品種は糖分が少ないため、カラッとした食感に揚げることが可能です。
※具体的には、男爵薯(いも)やメークインなど。
しかし、発売当初はお店で売られている品種しか手に入れることができませんでした。その点が、大きく異なると言えるでしょう。