「チョコレートで応援します」活動についてお聞かせください。
「チョコレートで応援します」活動には4つの柱があるのですが、世界の難民の子どもたちを救う活動(※)と病院で頑張っている子どもたちを応援する活動以外に、環境にかかわるものが2つあります。
※ミルクチョコレートの売り上げの一部を、国連UNHCR協会(国連難民高等弁務官事務所)へ寄付する取り組み。
1つ目は「きのこ・たけのこ里山学校」という、「公益社団法人 日本環境教育フォーラム」さんと一緒に実施する、年に2回ほど開催される自然環境プログラムです。小学生のお子さんと保護者の方をお招きし、里山に近い施設を利用して自然と触れ合っていただきます。
また、自然のなかでパンやバームクーヘンなどを作るというイベントもあります。環境とは直接関係するものではありませんが、自然のなかで皆さんが楽しんで取り組んでおり、とても好評のイベントのようです。
今年(2011年)は特に、東日本大震災の被災地である宮城県の泉岳(いずみがたけ)少年自然の家で、10月1日と2日に「きのこ・たけのこ里山学校」を開催しました。施設の方の話では、子どもたちのあんなに楽しそうな笑顔を見たのは久しぶりだそうです。
2つ目は「アグロフォレストリー(Agroforestry)」という、ブラジルのアマゾンの森林再生の取り組みです。「アグロフォレストリー」とは、農業を意味する「Agriculture」と林業を意味する「Forestry」を組み合わせた言葉であり、荒廃した土地に自然の森林に近い状態で(自然の生態系に倣った)多品種の作物を栽培することで、単一栽培では難しい持続的な生産を可能にし、森林を再生させていく農法です。1929年にブラジルのアマゾン移民として渡った日本人たちによって確立されました。最近ではCO2の削減という環境対策のひとつや生物多様性の観点から、“森をつくる農業”として世界的にも注目されています。
アマゾンでは荒廃した土地に多種多様な樹木や果樹を混植し、自然の森林に近い状態で栽培することで再生を目指しています。アマゾン東部にある人口50,000人ほどのトメアスー(Tome-Acu)という町では、アグロフォレストリー農法によりカカオ豆を栽培しています。
明治製菓のころから、トメアスー総合農業協同組合(CAMTA/Cooperativa Agricola Mista de Tome-Acu)とカカオ豆の購入に関する契約を締結しており、日系ブラジル人が中心に取り組むアグロフォレストリー農法の支援と、アマゾンの森林再生に貢献しています。
当社の菓子ユニットには、業務の柱として戦略的なCSRに携わる部署があり、日本からは地球の裏側に位置するブラジルに担当者や研究員が何度も足を運び、カカオ豆の品質を調べて製品の開発を進めてきました。そのような苦労もあって、今年の3月にようやく、ブラジルのトメアスー農園のカカオ豆だけを使用した「アグロフォレストリーチョコレート」が発売されました。「Milk」と「Bitter」の2種類がラインナップされており、9月には個包装のBOXタイプも発売されました。
この製品を通じて、アグロフォレストリー農法をもっと多くの方に知ってもらえればと思います。公式サイト内に「アグロフォレストリーチョコレート」専用ページもあるので、できるだけ多くの方にご覧になっていただきたいですね。
開発のために当社の研究員が何度も足を運んだのですが、現地の方々はカカオ豆の品質向上に対する意欲がとても高く、その熱意に感動したという話も聞いています。
「アグロフォレストリーチョコレート」を購入して食べたことがありますが、おいしいですよね。苦味が強いのではないかとイメージしていましたが。
環境負荷低減に重点を置いた製品でも、おいしくないというのでは意味がありません。「アグロフォレストリーチョコレート」はカカオ豆の酸味を十分に生かしており、味も日本人の口に合うように工夫しています。
ブラジルだけでなく、アフリカのガーナでも支援を行っています。それが、“トレーサブルカカオ豆”を通じた農家支援です。トレーサビリティという面で、ガーナの村で栽培された高品質のカカオ豆を安定的に購入するなかで、文房具の寄贈や井戸を掘ること、社員が現地を訪問して交流することなど、その地域の支援を行っています。2009年には「meiji」のロゴが入った井戸が完成しました。わざわざ遠くの場所まで水をくみに行く必要がないなど、現地の農家の人々の生活に役立っています。
ガーナの取り組みは、環境問題とは少し異なる視点になります。しかし、おいしいチョコレートを作るにはおいしいカカオ豆であることが必要であり、そのために今後も支援や定期的な交流活動を続けていく予定です。
「たけのこの里 竹林再生事業」というものを行っているそうですが、そちらについてお聞かせください。
これは、当社の大阪工場の1事業所が行っている活動です。竹林を放置しておくと、地すべりなどの災害につながることが全国的に報告されています。また、放置されることで山地が覆われてしまい、植生していた広葉樹や針葉樹の光合成が妨げられるので、森林の減少を招いてしまうという問題も報告されています。そのため、放置竹林の整備が緊急課題となっています。
大阪府高槻市の森林面積は4,639haもの広さを誇り、同市の面積の44%ほどを占めています。そして、竹林の面積は毎年拡大しており、大阪府下でトップの141haにもなります。
そこで、大阪府が山林所有者と企業に呼びかけ、仲介する形で企業がボランティアで竹林の整備と里山の再生に取り組む「アドプトフォレスト制度」に大阪工場が2009年より参画し、「たけのこの里 竹林再生事業」として高槻市郊外の里山で竹林の間伐を行っています。
「きのこの山」と「たけのこの里」の“ふるさと”として、現在も大阪工場の数多くの従業員が誇りを持って高槻市の里山を守り続けているのです。
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