貴社の「住まいるりんぐシステム」という、住宅の長寿命化のための技術開発やサポート体制とは、どのようなものですか。
「住まいるりんぐシステム」は、新築からアフターサービス・メンテナンス、リフォーム、売却・賃貸管理を含めた不動産サポートまで、将来にわたって安心できる住まいの循環システムです。当社は、新築住宅については標準仕様で「長期優良住宅」に対応し、耐震性や省エネ性能、劣化対策などに優れているほか、住み継ぐ際に高い価値を維持できる住宅履歴情報システムなどを備えています。また、業界トップクラスの構造体30年保証制度や充実したアフターサービス・メンテナンス体制を構築し、ワンランク上のデザインリフォームや環境に優しいエコリフォームなどの多彩なメニューを提案しています。そのほか、将来の住み替えの際にも安心のマイホーム借り上げや、売却の際に住まいの価値を適正に評価するスムストック査定なども用意しています。さらに一昨年(2009年)から、住まいの買取再生販売制度「ホームエバー」を開始したことで、これらの住まいの循環システムが確立しました。
貴社の「ホームエバー」についてお聞かせください。
近年、国の住宅政策はフローからストックへの転換を図っています。単にストックといっても、リフォームだけでなく中古流通も含めた既存住宅をどうするかという意味では幅広いものです。住宅でも、車のように中古流通という分野があります。住宅の中古流通は米国ではかなり多く、全体の約70%から約80%にもなりますが、日本ではまだ10%程度と少ないのが現状です。これを普及させるためには、住宅の素性をはっきりさせる必要があります。中古住宅で不安なことといえば、それがどのような経緯で建てられ、性能はどれくらいなのかなどが分かりにくい点です。それらをはっきりさせ、安心して中古住宅にお住みいただくために始めたのが、買取再生販売制度「ホームエバー」なのです。
自社の物件であれば素性が分かっており、補修が必要な部分も判断できます。「ホームエバー」というのは、自社の住宅をミサワホームで買い取り、必要な補修を行い、保証をつけたうえで販売するという仕組みです。この制度により、従来のスクラップアンドビルドではなく、建物を長持ちさせることが可能です。メンテナンスを適切に行うことで、当社の建物は50年でも100年でも持たせることができると思っています。
よく日本の一般的な住宅は30年くらいしか持たないといわれていますが、それは戦後のいわゆるバラック(仮小屋)も含めた“統計上のマジック”であり、十分なメンテナンスを施せば木質系の住宅であっても100年以上持つはずです。そのように長持ちをさせることによって、環境上の負荷を減らすことにつながり、資源の無駄使いも少なくて済みます。「ホームエバー」は、そのような点から始めた制度なのです。
買い取りでは審査がなされるかと思いますが、どのような基準が設けられているのですか。
買い取りの基準というよりも、査定なので「いくらで買い取るか」が重要となります。これは当社独自というわけではなく、住宅メーカー大手が加盟する「優良ストック住宅推進協議会」が設けている、「スムストック(SumStock)」という独自の査定基準を採用しています。
従来の日本の中古住宅の査定では、築20年もすると上物(※)の残存価値はゼロとされ、土地だけが評価されていました。このような査定が、住宅の中古流通が普及しなかった要因のひとつともいえるでしょう。
※土地の上に建物がある場合の建物を意味する。
築20年以上の住宅となると、壊すだけでもお金がかかってしまうので、査定では逆に不利に働いてしまうわけです。
しかし、古くてもしっかりと手直しすることで十分住むことのできる住宅はたくさんあります。そこで、建物と土地の評価を別にし、建物はそれ自体で残存価値を適正に評価しましょうというというのが「スムストック」という制度なのです。
基本的に住宅の再生を目的とするものなので、痛みの度合いにより買取価格は変わりますが、補修を行うことで十分住むことが可能なわけです。その意味では、“ここまで痛んでいる場合には買い取りをしない”といった線引きはなく、買取価格が変動するだけです。
ただし、売る側となるお客様のほうとしては、当然ですが高く買い取って欲しいわけです。そのため、必ずしも買い取りが成立するというわけでもありません。そういうバランスを見極めなければならない点が難しいところです。
どれくらいの買い取りが成立しているのですか。
「ホームエバー」のスタートがつい数年前ということもあり、まだまだ実績は少ないのですが、累計で100棟を超えています。月によりばらつきがありますが、2棟から4棟ほどが成立しています。
「ホームエバー」によりミサワホームだけではなく、他社さんの木造住宅に住んでいる方からも買い取って欲しいといった声をいただくようになりました。そこで、現在では「ホームエバー」とは異なる、買取・再販を行う仕組みも始めています。それも含めると、成立件数は年間でも100棟を超えるはずです。
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