貴社のそのほかの取り組みについて教えてください。
1992年に、当社では太陽光発電により生活エネルギーの約85%を自給できる「エコ・エネルギー住宅」を完成させ、余った電気エネルギーを電力会社に売る(売電)システムの採用により、売電契約第1号となりました。
当社には、新しい技術や先駆的な技術を大切にする社風があり、開発という点では競合他社さんよりも進んでいたといえるでしょう。未来を先取りしたものを作っていきたいという“DNA”があるようです。
「ECO Flagship Model」が現在の市場にどの程度浸透するかは不明ですが、20年先の未来にはそのような住宅が一般的になるはずです。
住宅メーカーに関わる環境問題の範囲は、かなり広いといえるでしょう。省エネルギーはもちろん、廃棄物や化学物質、騒音や振動など多岐にわたっています。環境というと、特に東日本大震災後を経験してからは省エネルギー問題がフォーカスされていますが、ほかにも取り組むべきことはたくさんあります。
当社では、ゴミについてもリサイクル率100%を目指してきました。環境負荷をなくすという観点から、当社の工場(2007年度)や施工現場(2010年度)ではゼロ・エミッション化を達成しました。この目標を達成するために、産業廃棄物中間処理施設「関東資源循環センター」を保有しています。
前の5ヵ年計画である「SUSTAINABLE2010」で、すでにゼロ・エミッション化に取り組むという内容を盛り込んでおり、工場では先行して達成したのですが、新築施工現場では昨年(2010年度)にようやく達成することができました。
一昨年(2009年度)から、施工現場の廃棄物の回収・選別・リサイクルを行う関東資源循環センターを稼働させ、そのノウハウを全国に水平展開しました。ただし、関東ではリサイクル施設が集中していますが、地方ではリサイクル施設がまだ少なく、ゼロ・エミッション化のハードルが高かったという印象です。
リサイクル施設を当社から紹介したり、取引業者さんに探していただいたりすることにより、ゼロ・エミッション化を達成できました。従来は埋め立てをしないという意味におけるゼロ・エミッションだったのですが、今後はゴミ自体を減らし、本当の意味で環境負荷をなくすことを目指していきます。その実現にはどうすべきか、現在社内で検討しているところです。
競合他社さんでも同様の取り組みを行っていますが、施工現場の廃棄物を全量計測しているのが当社の施設の特長です。1棟ごとのデータを廃棄物の品目ごとに集計することが可能であり、原因分析も容易にできるため、情報をフィードバックしやすいというメリットがあります。
当社では、1971年にすでに「省エネルギー研究チーム」というものを発足しており、先述したように、1992年には売電契約第1号を実現した「エコ・エネルギー住宅」を完成させています。1998年に世界初のゼロ・エネルギー住宅「HYBRID-Z(ハイブリッド・ゼット)」を発売し、太陽光発電システムとオール電化設備という当時の先進技術の融合により、居住段階におけるゼロ・エネルギー化を実現しました。
さらにそれを発展させ、先述のとおり2010年にはライフサイクルCO2マイナス住宅「ECO Flagship Model」を発表しました。いわゆる“エコ住宅”というと価格が高いという問題がありましたが、現在ではコストは当時と比較すればかなり抑えられてきています。確かに一般の住宅と比べるとまだ高い(坪当たり約100万円)のですが、環境に関心の高いお客様には自信を持ってお勧めすることができます。
今回の東日本大震災を経験し、セーフティネットという意味での太陽光発電システムの注目が高まると考えています。住宅メーカーにとって、太陽光発電システムを含めた省エネルギー住宅の伸びる余地はかなりあるといえるでしょう。
ライフサイクルCO2マイナス住宅というのは、正確にいえば年間のCO2の収支がマイナスになるということです。家を建てる際にCO2が発生しますが、その分を毎年のマイナス分で吸収していきます。現状では、マイナスになるまでのスパンとしては60年ほどかかっていますが、それ以降はCO2を吸収する形になります。これは、木と同じような考え方です。木はCO2を吸収するので環境にいい=ライフサイクルCO2マイナス住宅を建てるのも環境にいいというわけです。コンセプトは、“木を植えるがごとく家をつくる”です。
環境の取り組みに関する今後の方針についてお聞かせください。
住宅業界の団体として、「社団法人 住宅生産団体連合会(住団連)」や「社団法人 プレハブ建築協会(プレ協)」などがありますが、大手住宅メーカー各社が会員となっているプレ協の目標を踏まえ、当社では独自の目標を立てています。当社では5年で、プレ協の目標は10年などの違いがあります。
住宅業界というのは、プレ協の立てた目標と方向性を同じにするという意味で結束力が強いといえます。プレ協では、会員各社の目標達成度合いを踏まえて、全体で目標を達成しているかどうかを毎年公表しています。
ここ数年で環境目標のレベルが上がり、達成すべき目標値も高くなっているようです。特に東日本大震災の影響で、今後のエネルギー環境も変わってくると予想されるので、新たな目標を立てることが必要になるはずです。また、昨今の生物多様性といった新たな概念などについては、遅れることのないように対応していきます。今後はそれらを踏まえて、環境への取り組みを継続していかなければならないでしょう。
中村様 中田様
貴重なお時間のなか、取材にご協力いただきありがとうございました。昭和基地でも貴社の技術が活かされていることに驚きました。
- 新たな概念を盛り込んだ環境活動計画-「SUSTAINABLE2015」
- リサイクル素材の「M-Wood」と「M-Wood2」
- 昭和基地でもミサワホームの技術を活用
- 長く住み継がれ、資産価値を維持できる仕組みを体系化-「住まいるりんぐシステム」
- エネルギーの“見える化”と情報交換の場-「enecoco(エネココ)」
- 木材を扱う企業として-グローバルな植樹活動
- 東日本大震災の影響と環境意識の変化を見据えて