プラスチックの湿式比重選別とは、どのような選別方法なのですか。
湿式比重選別は、大きく「浮沈選別」と「ジグ選別」に分かれています。一般にPPを回収する際には浮沈選別を用いるのですが、それだけでは高い純度での回収ができないので湿式サイクロンも利用します。また、合わせてジグ選別を利用した選別も行っています。
浮沈選別というのは、媒体に水を使ってそれよりも軽いPP(※比重0.91から0.98)を浮上させ、それよりも重いABSとPS(※比重1.04から1.10)を沈降させて選別します。
水より軽いプラスチックというと、世の中にはPP以外にもPE(ポリエチレン)というものがありますが、家電製品にPEが使われるケースはほとんどありません。湿式サイクロン装置も組み合わせているので、99%以上という高純度で回収することが可能です。
浮沈選別によって沈んだプラスチックからABSとPSの混合物を回収するには、ジグ選別装置を使います。ジグ選別とは、沈んだプラスチックを上下にジギング(揺動)させることによって、比重の重いものほど早く沈むという現象を利用し、比重ごとの層を形成させることによって選別するものです。揺動水流によって重比重の層が下に、軽比重の層は上に形成されるという原理を利用し、軽比重のABSとPSの混合物を、重比重のそのほかのプラスチックと選別することが可能です。
それでは、静電選別とはどのような選別方法なのですか。
比重では分けることのできないABSとPSの混合物は、静電選別を用いて選別します。プラスチック同士を擦り合わせると静電気が起こる(帯電する)のはご存じかと思いますが、帯電筒というものを回転させることにより、ABSとPSの粒子を擦り合わせて、静電気を発生させます。PSはマイナスに、ABSはプラスに帯電する性質があるため、前者をプラス電極に、後者をマイナス電極に引き寄せることで選別できるというわけです。
このようなプロセスを通じて、PP・PS・ABSを99%以上の純度を保ちつつ分けることが可能です。そして、最後にX線分析選別を行います。
なお、簡単に説明していますが、PPでもガラス繊維を含有して重くなっている、タルク(滑石)や炭化カルシウムを含有しているなど、さまざまなものが混ざっているので、実際のプロセスはもっと複雑です。
X線分析選別の内容についてもお聞かせください。
X線分析選別では、透過X線(レントゲン)を使います。臭素はX線を通しにくい性質を有するため、それが含まれていると透過するX線が少なくなり、X線像の影が濃く映ります。コンベアーで大量にプラスチックを流し、臭素を含んだプラスチックをこの透過X線像で検知し、エアガンで弾き飛ばすことにより選別します。
なお、前述したRoHS指令では、特定難燃剤と呼ばれる「ポリ臭化ビフェニル」と「ポリブロモジフェニルエーテル(ポリ臭化ジフェニルエーテル)」の2つが対象物質に含まれています。後者は、かつて高性能な臭素系難燃剤として“デカブロ(Deca-BDE)”という通称で呼ばれ、テレビのバックカバーなどに使われていたことでも知られています。
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