当社の環境方針における取り組むべき重要課題として、「CO2排出量の削減/再生可能エネルギーへの転換」「資源循環」「大気・水・土壌・生物多様性の保全」の3つを掲げています。当社はこれらについて、商品・技術、生産・物流、販売、ビジネスパートナーそれぞれに目標を定め、具体的な活動を推進しています。
これらの活動を進めていくうえで、当社のグローバル環境マネジメントがベースとなります。また、従業員が目指す姿として、「シンシア・エコイノベーター(Sincere Eco-Innovator)」というビジョンを、「NCP2010」の発表の際に打ち出しています。
「シンシア・エコイノベーター」とはどのような意味なのですか。
これは、環境という課題に対して誠実(sincere)に取り組むことはもちろん、革新的(eco-innovator)でなければならないことも意味しています。具体的には、日常の生産活動において効率改善によってCO2排出量の削減を積極的に進めていきつつ、持続可能なモビリティ社会の発展のためにも革新的な商品を提供し、従来の伝統・慣習といった枠にとらわれない形で環境負荷低減を目指していくというものです。
また、社内だけではなく社外のステークホルダーの方々に対しても取り組みを伝え、ともに活動していくことが重要です。ステークホルダーの方々に対しては、さまざまな形で積極的にコミュニケーションやエンゲージメントを図りながら、彼らが当社に何を求めているのかを把握するように努めています。当社はグローバル規模で事業展開をしていることもあり、日本国内だけでなく各国の専門家とも議論をしながら、どうすれば効果的に伝えられるのかを検討しなければなりません。
「NGP2016」では、ビジネスパートナーに関する内容を新たに追加しています。その理由は、クルマという製品の環境負荷だけでなく、サプライヤーさんによる製造や、資源採掘といった、当社がクルマを製造する前段階でも環境負荷を低減するために、ビジネスパートナーの方々との協働が重要となるからです。
昨今では「Scope3(※)」などを通じてバリューチェーンの対象を広げ、環境に及ぼすインパクトを把握しようという企業が増えつつありますが、当社でもお取引先さまと一緒になって取り組んでいきます。
※温室効果ガス(GHG)排出量を算出・報告するために採用している「GHGプロトコル」の基準のひとつ。企業が直接排出した温室効果ガスを対象とする「Scope1」と間接排出を対象とした「Scope2」以外の、企業のサプライチェーン全体に相当する範囲を対象とするもの。
日経の「企業の環境経営度調査」で、企業ランキング2位に輝いたそうですね。
今年(※2013年)の1月に日本経済新聞社が公表した「企業の環境経営度調査」における企業ランキングでは、当社は総合2位、自動車業界としてはトップになりました。
「日産リーフ」という革新的で持続可能な車を製造・販売していることもあって、そのような評価をいただけたのかと思いますが、これまで継続して推進している「ニッサン・グリーンプログラム(NGP)」に地道に取り組んできたことも大きな要因ではないかと考えています。
環境への取り組みというと、本業とは分けて考える企業も多いのですが、貴社ではどのように戦略と結び付けて取り組んでいるのですか。
私は、当社の次期経営戦略を策定する「経営企画室」に在籍しています。経営企画室は、経営戦略を策定するグループと、環境戦略を策定するグループとに分かれており、それが環境と経営を両立させていこうという当社の方針を表していると言えるでしょう。この2つのグループは少数で構成されていますが、生産部門や開発部門へのレポートラインを持っているメンバーも集まっており、クロスファンクショナルに戦略の立案・実行を行っています。
貴社の従業員の環境への意識はいかがでしょうか。
そもそも、クルマ自体が環境に対して大きな影響を与えていることもあり、開発や生産にかかわる人たちの環境への意識やモチベーションはとても高いと言えます。本社に勤務している従業員の方にも意識をしてもらうために、全社で「ISO14001」認証を統合して取得しています。生産部門は10年以上も前から認証を取得していたのですが、クルマを製造する企業の一員として環境問題はとても重要な課題であるため、全社で取得しようという流れとなりました。そこで、従業員一人ひとりに環境方針を記載したカードを配り、その空欄に個人の環境行動宣言を書いてもらうことで、環境意識の向上を図っています。
大切なのは、日常の業務において常に環境問題を意識することだと思います。ゴミを減らすことや省エネはもちろん、本業においても環境負荷低減に貢献できることはないのかを考えることが重要です。
本業における環境負荷低減として、具体的にはどのようなものがあるのですか。
日本ではデジタル化により、給与明細のペーパーレスを実現しています。開発チームでは早い段階から実現したかったものの、社内でもさまざまな意見があったため、実現に時間がかかったという背景がありますが、これは本業のなかで環境問題に貢献できることは何かという視点から取り組みが実現した代表的な事例と言えるでしょう。
CEOのゴーン自身が「日産リーフ」の重要性を自らの言葉で述べていることに加えて、環境への取り組みが継続しており、しかもそれが進化しているということで、当社の環境への取り組みは社外の多くの方々から評価をいただいております。
牧野様 朝日様
貴重なお時間のなか、取材にご協力いただきありがとうございました。さまざまなデバイスとして活用できる「日産リーフ」は、まさに未来を先取りした車ですね。
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