日清食品ホールディングス株式会社

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おいしくてエコ!-「カップヌードルリフィル」

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日清食品ホールディングス株式会社

環境への取り組みに関する今後の方針についてお聞かせください。

日清食品グループでは、2011年までの中期環境目標を2007年に策定しています。世界的に重要度が高いCO2排出量の削減目標については、2011年度の中期目標では、2005年度比でCO2排出量を25%削減ということを掲げており、2008年度の実績においてすでに23%削減を達成しています。現在、工場ではボイラーの燃料を重油からCO2の排出が少ない天然ガスに転換しており、それがCO2排出量の23%削減に大きく貢献しています。

また、製品面でも環境対策を実施しています。具体的には、環境に配慮した容器・包装設計の基本方針を策定し、それに基づいて製品開発を進めています。

これだけはお話しておきたいことなどはありますか。

当社は、2008年に創業50周年を迎えたのですが、さらに次の50年に向けて「百福士(ひゃくふくし)プロジェクト」というものを行っています。これは、50年間に100の社会貢献活動を実施しようというプロジェクトです。

江戸時代、外交使節団の代表を「正使」といい、正使の下で働く人を「副使」と呼んだ故事にならい、社会貢献活動に情熱を注いだ安藤百福の志を継ぐ社員を「百福士」と名づけました。2010年2月の時点では第3弾まで実施し、3月にはさらに2つが加わりました。計算すると、達成までに毎年2つ以上の活動を行う必要があります。これは、他社でも今までにない、大規模かつユニークな取り組みではないかと思います。

第1弾のプロジェクトは、アフリカ事業家自立支援「ケニア“Oishii(おいしい)”プロジェクト」です。現在、アフリカでは食糧支援などが行われていますが、それでは食べものをもらって終わりとなってしまいます。当社では、持続可能な取り組みを行うことが重要だと考え、アフリカにインスタントラーメンの技術を教えることで、その技術を習得した人が将来的に事業家になってもらうことを目指しています。

2008年にはケニアのジョモケニヤッタ大学にテストプラントを導入し、大学の研究者などがインスタントラーメンの製法の技術を身につけ、ケニア版チキンラーメンを学校給食として届けるまでになっています。現地(特に農村部)の食生活自体はまだ貧しいこともあり、無料の給食を食べるためだけに学校に来るという子どもが多いのです。また、豆を煮たものが主食となっており、インスタントラーメンは食生活の向上に貢献できるということで、学校給食にチキンラーメンを届ける活動を続け、インスタントラーメンの普及に努めています。

第2弾のプロジェクトは、「“あやしいオヤジを、正しいオヤジに変える!”プロジェクト」です。子供たちの「自活力」を育むためには、自然体験活動が欠かせないといわれていますが、将来その自然体験活動の指導者が不足すると懸念されています。

そこで、自然体験活動の指導者を育成するというのがこのプロジェクトなのです。具体的には日清食品グループの50歳以上、団塊世代の社員を対象として、自然体験活動の指導者資格を取得してもらい、その資格を有する人が子どもたちに自然体験活動をボランティアで教えるという活動です。2008年10月からスタートし、年2回実施しています。

プロジェクト名には、団塊世代の方が定年後にぶらぶらするだけの“あやしいオヤジ”となるのではなく、自然体験活動の指導者資格を取得することで“正しいオヤジ”として広く社会に貢献してもらいたいという意味が込められています。そして自然体験の少ない子どもたちに、自然の素晴らしさや楽しさを知ってもらいたいと考えています。

第3弾のプロジェクトは、「“もしもの時のチキンラーメン・カン”プロジェクト」です。2008年8月25日にチキンラーメンが発売50周年を迎えることを機に、大阪府・大阪市・池田市の3自治体に防災備蓄食用として新開発した、缶タイプの「日清チキンラーメン・カン」を、同年8月22日に10万食分寄贈しました。

チキンラーメン・カンは、酸素遮断性のあるプラスチック容器を採用し、容器内には脱酸素材を入れています。内部の酸素を取り除き、中身(特に油)の劣化を抑えることで、3年間という長期保存が可能となっています。熱湯を注いで3分経てば、通常のチキンラーメンと同じように食べることができます。

日清チキンラーメン・カン"

防災備蓄食用というお話がありましたが、阪神淡路大震災のときに、被災地にインスタントラーメンを車で届けに行ったという話を聞きました。

阪神淡路大震災が起こったのは冬の寒い時期ということもあり、温かいインスタントラーメンは被災地では特に喜ばれたと聞いています。ニュースで被災地の様子を見た安藤は、急遽社内で日清食品災害対策本部を組織し、給湯機能を有するキッチンカーと、インスタントラーメン約15,000食を積み込んだライトバン2台で、神戸市に向かいました。

2007年の新潟県中越沖地震のときにも、給湯機能を有するキッチンカーの派遣と、カップヌードル11,000食を届ける救援活動を行っています。このように、災害時には迅速に商品をお届けすることで、緊急物資としての価値の高いインスタントラーメンを活用しています。海外においても、業界団体と連携し、被災者に食糧を支援しています。

「お湯と生きる プロジェクト」という、面白いWebサイトを拝見しました。

お湯と生きる プロジェクト」は、「百福士プロジェクト」の第4弾としてWebサイトを中心に展開するCSR活動です。 サブタイトルを“インスタントラーメンのお湯でもSTOP温暖化”としているように、お客様がインスタントラーメンを食べるためにお湯を沸かす際に排出される、CO2の削減提案をすることを目的としています。

自動車メーカーであればアイドリングストップ、家電メーカーであれば省エネになる製品の使い方を提案する取り組みを行っています。一方、食品メーカーの環境活動は一般に、工場における取り組みや製品開発時における取り組みというのが中心となっていて、商品の使用時の環境負荷低減のための提案をしていなかったように思います。そこで、当社としてはインスタントラーメンを食べるときにかかせない「お湯」と生きている企業の責任として、いち早く、お客様がインスタントラーメンを調理するときのCO2削減の提案をして、地球温暖化防止のために貢献したいと考え、立ち上がったプロジェクトが「お湯と生きる プロジェクト」というものです。

一般に行われていると考えられる調理法から、当社が提案する調理法に変えるだけで、約37万トンのCO2排出量を約60%、22万トンも削減できることになります。この37万トン(※)という数字は、インスタントラーメンを食べるためにお湯を沸かす際、日本で1年間に排出されるCO2の総量です。

※世界ラーメン協会(WINA)が、2008年に食べられたインスタントラーメン52.5億食から算出。

非常に簡単にできることなので、ぜひ皆さんにも実行して欲しいですね。Webサイトでは、具体的な4つのアクションを提案しています。

多くの方は、お湯が容器に注いでいる途中でなくなるのが嫌なので、少し多めに沸かしているのではないでしょうか。実は、この“ちょっと多め”というのが“かなり多い”のです。余分に沸かせば、それだけCO2を排出する結果となります。300mℓのインスタントラーメンを調理する際、一般には350mℓほどあれば十分なのですが、学生を対象に調べたところ約850mℓ沸かしているという結果がでました。

また、お湯を早く沸かそうとして強火にする人も多いのではないでしょうか。ヤカンの底からはみ出た火の分だけ、CO2を排出していることとなります。実際にはヤカンの底ぐらいの面積を温めるという、わずかな火力でも十分にお湯を沸かすことができ、そのほうが効率的なのです。

ほかにも、ヤカンの表面や底を濡らしたまま火にかけると、水蒸気が蒸発するのに余計なCO2を排出することとなります。沸騰後はすぐに火を止めることで、無駄なCO2の排出を減らすことができます。

このようなちょっとした4つのアクションを実践するだけで、CO2排出量を約60%も削減することが可能です。皆様の身近な調理のなかからでも環境に貢献できるということを伝え、多くの方に環境問題について興味を持っていただきたいですね。

コンテンツのなかでは、地球温暖化のメカニズムなど役立つ情報も掲載しているので、ぜひご覧になっていただければと思います。このような形で環境問題について知っていただくことを、今後も続けたいと考えています。

安武様
貴重なお時間のなか、取材にご協力いただきありがとうございました。以前のカップヌードルのなかに入っていたお肉を「ダイスミンチ」というのは初めて知りました。


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