今回の「エコなニュース」は、快適空間のある住まい「家族謳歌(おうか)」でおなじみのエス・バイ・エル株式会社様の取り組みをご紹介。
エス・バイ・エル株式会社様では、日本の住宅業界初の邸別高耐久化システム技術「LOOP」や「X:PS(バイパス)プロジェクト」など、数多くの取り組みをなさっているようです。その詳細は、どのようなものなのでしょうか。
技術開発グループ グループ長 藤本様
早速ですが、よろしくお願いいたします。
環境への取り組みを始めたきっかけについてお聞かせください。
当社は2011年6月に創業60周年を迎える、最も歴史の長い住宅メーカーです。
約60年(※2010年12月に取材)もの間住宅を供給し続けてきたなかで、徐々に高度成長化が進み、その過程で住宅も大きく変化していったように思われます。
このままで本当に良いのかという疑問が生じてきたころ、社内でも「日本の住宅を見直すべき時期にある」という意見が出てくるようになり、やはりこれからの住宅は環境問題を抜きには考えられないと思うようになりました。また、現在は大量に住宅を建てる時代ではなく、少子高齢化という社会環境も環境への取り組みのスタートに影響しているでしょう。環境問題というものを軸に、考え直さなければならない部分は多いのではないかと考えています。
例えば、住宅というのは内需産業(内需依存型産業)の“柱”ともいえる位置にありながら、使用している原材料の大半は国外のものなのです。当社でも北米の木材を使用していますが、当社では北米のしっかり管理された森林資源を約30年(※2010年12月に取材)に渡り使用し続けてきたこだわりを、地球環境という視点で形にしておきたいと考えたわけです。
当社は木で創る住宅一筋ということもあり、木材はCO2ゼロという点で非常に貢献度が高いと考えていました。木は、CO2を吸収し、炭素化合物として内部に固定化して成長します。これは、「CO2の固定化」「炭酸同化」と呼ばれる作用で、大気中のCO2を削減し、地球温暖化を防止する役割を果たしています。木の住宅づくりを進めることは、それ自体がひとつの環境対策ということができ、その木材の良いところを情報として発信していければという思いがあったのです。
当社が環境への取り組みを進めていくなかで、ひとつの考え方の軸というものを作る必要がありました。社内で議論を重ねていくなかで、住宅を建てる以前の建材のときから、住宅としての役割が終わるまでのトータルで(資材調達から工場生産・輸送・建築・居住・解体・廃棄に至る一連のプロセスで)発生するCO2排出量・抑制量を±ゼロにするというのが、当社には適しているだろうという考えに至りました(※CO2ゼロ宣言)。
現在では、多くの企業でCO2ゼロを当然のように掲げられていますが、5年ほど前(※2010年12月に取材)ではほとんどそのようなことはなかったかと思います。日常生活においてCO2ゼロということはいわれていたかと思いますが、トータル的な視点では考えられてはいなかったはずです。そこで、当社では住宅の一生涯、トータルでCO2ゼロを目指していこうではないかということになったわけです。
現在では様々な新しい技術が発達し、それが生活のなかに組み込まれているため、それらの技術を簡単に捨ててしまうことは当然できないはずです。良いものは使いつつ、昔の人たちから伝えられている工夫を継承していくことが大事だと考えています。
「環境ビジョン」というものを策定なさっていますが、その内容についてお聞かせください。
「環境ビジョン」とは、創業時から基本としてきた「住まいの哲学」というものをベースとして、地球環境を守り、自然や地域の風土と調和した環境と共生する住宅を建てることで、次世代につなげる社会の実現を目指す、当社の目標のようなものです。
当社の全工場(※つくば工場・山口工場)では、12年前(※2010年12月に取材)の1998年にISO 14001を取得しました。工場では建物の構造躯体となるパネルを生産しており、木材を加工して、残った廃材を捨てずに様々なものに利用していくことなどは、早い時期から進めて参りました。そして、製造段階での廃棄物の99%以上をリユース・リサイクルし、2003年にはゼロエミッションを達成しました。
しかし、当社は住宅というものをトータルで供給していることから、工場での取り組みだけでなく、住宅を軸とした、広い視点での取り組みを進めるようになったのです。
供給者であり生活者でもある企業という立ち位置を含めて、暮らし方という点でも考えていくべきだということで、先述の「CO2ゼロ宣言」を初めとして、「環境に配慮した住まいの提供と暮らし方の実現」「ゼロエミッションの実現と資源の有効利用の推進」「環境行動を通じた社会貢献」という、「環境ビジョン」の4つの柱(項目)が決まりました。
例えば「環境行動を通じた社会貢献」をひとつ挙げるとするならば、展示場などで実施している「キャンドルナイト」です。「キャンドルナイト」は当社が積極的に進めている地球温暖化防止や、省エネルギー対策などの環境保全への取り組みの一環として、また、地球温暖化防止のための国民運動「チャレンジ25キャンペーン」の賛同企業として、本社・支店のみならず全国の住宅展示場および連結グループ会社も含め、全グループ規模で3年前(※2010年12月に取材)から夏至と冬至に行っている取り組みです。
「キャンドルナイト」は、「電気を消して、スローな夜を」を合言葉に、電飾の明かりにまみれた日常から少し離れ、キャンドルを灯し、自然の光のなかで思い思いにゆったりとした時間を過ごす運動で、毎年、全国各地でご好評をいただいており、現在ではオーナー様・お客様・従業員が一丸となれるイベントとして定着したといえるでしょう。
各住宅展示場にご来場いただいたオーナー様やお客様を含めて、エコな暮らし方について啓蒙できたらいいなという想いから、「キャンドルナイト」はスタートしました。最初は数ヶ所の展示場で実験的に行ったのですが、それが大変好評につき定期的に実施しようという流れとなり、現在では全国の展示場に拡大しています。
各展示場により趣向は異なるのですが、子どもたちと一緒に手作りしたキャンドルを点灯したり、お料理教室や幻想的な明かりのなかでコンサートを実施したりするなど、ご家族皆様でお楽しみいただける様々なイベントを行います。これが、「環境行動を通じた社会貢献」という、社会に向けた環境への取り組みのなかでも大きなものといえるでしょう。
また、当社の全国施設及び当社のグループ全社では、夏至と冬至の日(もしくはその前後の営業日)に、18時半に一斉に照明を落とす「ライトダウン」も実施し、CO2削減に貢献すると同時に、全社員のエコ意識の浸透も図っています。
- 木造住宅へのこだわりが環境への取り組みのスタート
- トータルで環境問題を見直す「X:PS(バイパス)プロジェクト」
- 将来的には国産材で住宅を建てたい
- 長く住める家を-日本の住宅業界初の邸別高耐久化システム技術「LOOP」
- 家族で“エコ育”の場を設けることが必要