エス・バイ・エル株式会社

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木造住宅へのこだわりが環境への取り組みのスタート

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エス・バイ・エル株式会社

環境への取り組みに関する今後の方針についてお聞かせください。

私たちを含めた生活する者が環境に対する意識を持ち、積極的にアクションをしなければならない時代だと思います。

今まで環境問題というと、企業がCSR的な観点からやっているというイメージがあったのですが、これからは一人ひとりが実践しなければならないという状況なのです。住宅に住む私たち自身が考えながら、環境問題に取り組めるような仕組みができればと思っています。

現在、住宅業界では電気自動車が大きなきっかけとなり、「スマートグリッド」や「スマートハウス」という流れへと進んでいますが、私には言葉だけが独り歩きしているような印象を持っています。確かに、自分たちで作ったエネルギーを上手に使い、余った分は保管するという考えや、それをセンサー技術によりコントロールする住宅という発想も理解できます。でも、それのみがクローズアップされるのは少し違うのではないかという思いもあります。

世間では、私たちの意識が変われば1割~2割ほどCO2を削減できると頻繁にいわれているようです。現在努力すべきは、生活する者が意識を持ち、様々な取り組みを実践することで、そのための住宅を提供するのが、当社の役割ではないかと思います。

また、次の世代への継承も大切です。室内の機器が自動でエネルギーの調節してくれるというのでは、子どもたちが環境問題を意識することはなくなるでしょう。打ち水で周囲の温度を下げる、適度に窓を開けて換気をしたほうがいいなど、“エコ育”の場を設けることが必要だと考えています。

そのための当社の重要な取り組みのひとつとして、「エネルギーの見える化」を挙げることができます。実際に、日常生活においてどれくらいのエネルギーが消費されているのかは、分かりにくいといえるでしょう。エネルギーを可視化し、家族で話し合うことで、どこを節約すればいいのかを考えていく、エコな暮らしを意識するきっかけになればと思います。

2010年12月7日にプレスリリースしたものとして、『「CO2ゼロ宣言」に向けた自然エネルギー活用における技術開発実証実験開始』というものがあります。これは、太陽エネルギーを最大限に活用していこうという実験です。

同年12月12日に、当社の「岐阜県庁前展示場(岐阜県岐阜市)」が新しくオープンしたのですが、そこで、先述した『「CO2ゼロ宣言」に向けた自然エネルギー活用における技術開発実証実験』を行っています。

一般に日当たりの悪い部屋は暗く、昼間でも明かりを点灯させる必要があります。そこで、採光パネルや「光ダクトシステム(※)」などを設置し、その部分に太陽の光を導くことで、昼間の照明エネルギーの削減を目指しています。人間というのは、太陽の光によって体内時計が調整されるそうです。その意味では、自然エネルギーの活用により、健康的な生活を送ることもできるわけです。

※光ダクトシステム=自然光を、高効率反射鋼鈑によるダクトを通して室内や地下空間などの採光として使う技術で、クリーンで健康的な明かりを導く仕組み。

光ダクトシステム

また、太陽光発電の電力を蓄電池に充電し、その日の夜に直流のまま照明に利用するという、太陽の恵みを最も効率よく明かりとして利用する、「独立系直流LED照明システム」に関しても検証しています。

独立系直流LED照明システム

さらに、先述した「エネルギーの見える化」も、この展示場にて「光熱費の見える化システム」として試行を進めており、1日の各部屋での発電量、ガス・電気・水道の使用量およびその換算CO2排出量など、全光熱費を可視化し、住まい手に“気付き”を与え、家族全員で工夫して省エネに取り組む“エコ育”を紹介し、普及促進を図ります。

光熱費の見える化システム

このように、当社では生活する人が環境問題について意識する場を提供していくことを目指していきたいと考えています。もちろん、これは環境への取り組みのスタート段階でありますが、様々な実験を通じてさらに、環境に配慮した住宅と“エコ育”の普及を進めていきたいですね。

以前の日本の住宅というのは、生活する人が暮らしやすいようにとても考えられていたのですが、近代化や都市化が進み、そのような部分は少なくなってきたように思います。そこで、新しい技術を採用しながらも環境問題を意識させ、それを子どもたちに伝えるために、当社がお役に立つことはできないか、これからも模索していきます。

貴社では、エコ冊子「長く暮らせる木の住まい」とエコバッグを作成されているそうですが。

木は元々環境に優しい素材です。その素材の良さを生かし、一代限りで次々に建て替えるのではなく、強くて快適でいつまでも住み継いでいける住宅をつくることが当社にできる一番のエコではないかと考えており、その合言葉は「SxL(Strong x Long)」が意味する「ずっと強い」です。

このエコ冊子「長く暮らせる木の住まい」では、先述した、一般の方が理解するには難しい「LOOP」などの技術を分かりやすくまとめており、当社の「ずっと強い」住宅について、主婦やお子様を含めた多くの方に知っていただきたいという目的で作成しました。お子様に読んで聞かせてあげる絵本としてもお使いいただけ、当社ではこのエコ冊子を活用して、展示場などでエコセミナーも実施しています。

エコ冊子「長く暮らせる木の住まい」

また、当社の住宅展示場では、従来、ご来場いただいたお客様に、カタログを紙袋に入れてお配りしていたのですが、紙袋は何度も使い回しができるものではないので、もったいないという考えがありました。そこで、紙袋の代わりに、何度も使い回しのできる2種類のエコバッグ(トートバッグ・カタログ袋)を作ったのです。

エコバッグ

布製のしっかりしたトートバッグを、商談時に図面などを入れてお持ちいただくようお客様へお願いすることで、従来の紙袋の使用量を大幅に削減することが可能となりました。

また、カタログ袋はバイオマス製品(※とうもろこしのでんぷんなどから作る生分解性プラスチック)であるため、生産時や廃棄時のCO2の排出量を、従来の紙袋の13%も削減することができます(※2010年12月に取材-2011年1月より別の製品にシフト)。

藤本様
貴重なお時間のなか、取材にご協力いただきありがとうございました。日本の住宅業界初の「LOOP」という画期的な技術には驚かされました。


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