浄水器の「トレビーノ®」についてお聞かせください。
CO2やゴミの削減という意味では、「トレビーノ®」も環境にやさしい製品だといえるでしょう。例えば、LCAの観点から、やかんで沸かしたお湯を冷ました水道水2Lと、「トレビーノ®」を使った水2LのCO2排出量をある一定条件下で比較した場合、前者は約100g-CO2でしたが、後者は4.4g-CO2というデータもあるように、かなり削減することができます。
ただし、CO2排出量の削減という部分に注目して浄水器を購入するお客様は少ないと思われますので、基本的にはおいしく・安心な水が飲めるというのが重要です。
「トレビーノ®」には蛇口直結型やポット型など、いくつかのタイプがあります。蛇口直結型では、粒状活性炭と多層構造中空糸フィルターのダブルろ過システムを採用しており、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル分を損なうことなく、おいしい水が飲めるようになっています。
当社では「トレビーノ○R」以外にも、長年培った水処理膜技術を活用し、海水の淡水化や下水道の再利用といった、水資源問題の解決に向けた取り組みを進めています。
海水の淡水化のお話がありましたが、RO膜など、貴社の水処理膜技術についてお聞かせください。
東レでは世界でもトップレベルの膜処理技術を有しており、RO(逆浸透)膜・NF(ナノろ過)膜・UF(限外ろ過)膜・MF(精密ろ過)膜という4種類の膜製品があります。
RO膜は逆浸透膜とも呼ばれており、技術的難易度が高く、分離対象物質が1番小さいという特徴があります。4つのなかで分離対象物質が最も大きい(※10μm(マイクロメートル)~1μm)MF膜はコロイドや細菌を除去対象としており、分離対象物質が最も小さい(※1nm(ナノメートル)以下)RO膜はイオンや塩分などを除去することが可能です。
RO膜はイオンレベルの物質を取り除くことができるので、海水淡水化や廃水再利用など、幅広い用途に活用することができます。
海水淡水化は従来、海水を蒸発させて塩分を取り除く「蒸発法」によって行われていましたが、大量のエネルギーを要するため、環境破壊の原因にもつながっていました。そこで、東レでは海水を蒸発させずに塩素イオンを除去できる、環境負荷の低いRO膜の開発に力を入れています。ただし、いきなり汚れた水をRO膜にとおすわけにはいかないので、基本的に前処理としてMF膜やUF膜を組み合わせています。
廃水再利用では、工場の製造プロセスなどから出る廃水を膜処理することにより、再度その水を製造プロセスで利用できるようにします。これにより、工場では取水量や廃水量が低減するため、環境に負荷をかけない製造工程の実現が可能となります。
水処理膜技術は、世界各地で使用されているそうですね。
中国やインド、中東などの慢性的な水不足となっている地域でも、当社の水処理膜技術が使用されています。
世界各地で水不足が問題となっており、今後はさらに深刻化するのではないかと懸念されています。海水を引くことができる地域では海水の淡水化技術を、それが難しい内陸部では下水や廃水の再利用技術を活用しています。
- 2020年近傍で達成すべき2つのビジョン
- 環境負荷低減と持続的成長を目指す-「LCM」環境経営
- CFRP(炭素繊維強化プラスチックス)を使って次世代コンセプトカーを開発
- きれいで安全な水を-世界トップレベルの水処理膜技術
- 断熱効率の向上-機能性インナー「ヒートテック®」
- 「AP-Growth TORAY 2020」の下でグリーンイノベーション事業を拡大