環境に配慮した商品とサービスについて、代表的なものをお聞かせください。
多くの方々が「TOTO=トイレ商品」とイメージされるかと思います。トイレ商品はTOTOでの歴史も長く、国内外で力を入れている分野です。
トイレ・お風呂・食器洗い・洗濯・掃除というように、家庭で水を使う機会は多いのですが、1日で最も水を使っている場所はどこか、ご存知でしょうか。
あまり意識していなかったので、難しいですね……。お風呂やキッチンでは何かと水を使うイメージがありますが。
実は、一番水を使うのはトイレなのです。東京都水道局の2006年度の調査によると、家庭で水を使う割合はトイレで28%、お風呂で24%、炊事で23%、洗濯で16%、洗顔などのその他では9%となっています(※)。なぜトイレが最も水を使うのかというと、お風呂や台所とは違い、個人で利用するためです。
※東京都水道局 の『平成18年度 一般家庭水使用目的別実態調査』による。
お風呂であれば家族みんなで浴槽のお湯を使うし、台所ならば家族みんなの食器を洗うというわけです。しかし、トイレの場合には一人ひとりが毎回水を流し、共有することができません。また、水を流す回数もほかの場所と比べて多いといえます。
それらが背景にあり、TOTOでは主にトイレの便器洗浄水量の節水化という観点から、長年をかけて技術を進化させてきました。トイレはお客さまが自分で便器洗浄水の使用量を調節することができないため、企業側で努力する以外にないわけです。40年前の時点では、便器洗浄水の使用量は20リットルでした。
そこで、1976年に発売した商品では、便器洗浄水の使用量を13リットルに減らしています。大小の切り替えを一般化し、全体の洗浄水量を減らしました。
そのような節水技術の蓄積もあり、今年(2012年)2月に発売したウォシュレット一体形便器「ネオレスト ハイブリッドシリーズ」の「床排水タイプ」では、便器洗浄水の使用量を大洗浄時:3.8リットルにまで削減できました。
大幅な節水を実現したのは近年になってからといえますが、1994年ごろの10リットルから少しずつ便器洗浄水の使用量を減らしていき、小数点以下の世界で節水化に取り組んできたわけです。1回当たりの便器洗浄水使用量の節水が小数点以下でも、年間の利用回数で考えると大きな差になります。
比較において当社で従来商品と呼んでいるものは、1976年に発売された便器洗浄水の使用量が13リットルの便器です。
その商品を基準としたときに、最新の商品(3.8リットル)では便器洗浄水の使用量を約75%も削減できたのです。それを量で換算すると、年間で1台当たり約5万2,000リットルもの節水(※240リットルの浴槽で235杯分)で、約1万5,000円もお得になります。また、大小の切り替えにおいて、回数が多い小用の場合に便器洗浄水の使用量を少しでも減らすことでも、大幅な節水を実現しています。
大と小で便器洗浄水を流すボタン以外に、もうひとつ男性用の「eco小ボタン」を付けるという形でも節水に貢献しています。普通の小ボタンは女性用であり、「eco小ボタン」はトイレットペーパーを使わない男性用というわけです。トイレットペーパーを使わない分、便器洗浄水の使用量をさらに削減できます。また、便座周りの掃除のときなど、ほんの少しの水を流すだけで十分という場合にも便利です。
日本では、基本的に便器洗浄水の使用量について規制はないのですが、海外ではそのような規制が設けられている国も数多くあります。
例えば、米国やカナダでは1994年から6.0リットル(※米国の一部地域では、2011年より4.8リットルに規制)、中国(※)や欧州でも6.0リットルに制限されています。
※都市部では2005年より6.0リットルに、国全体では1988年より9.0リットルに規制。
このように、海外ではかなり早い時期から節水機能を有する便器のニーズは高かったのです。そのため、TOTOでは日本国内よりも先に、便器洗浄水の使用量が6.0リットルの商品を発売しました。
当社では、米国の一部の地域で、2011年から4.8リットル規制がスタートするという情報を早い段階で入手し、その規制に先駆けて、便器洗浄水の使用量が4.8リットルの商品を、2006年から海外で、2009年から国内でも普及させてきました。現在、TOTOはこの4.8リットル商品をグローバルスタンダードと位置づけ、普及の取り組みを進めています。
そういえば、ウォシュレットの部品をリサイクルされているそうですね。具体的には、どのようなものに生まれ変わっているのですか。
意外に思う方もいるでしょうが、実は、ウォシュレットは「電化製品」として取り扱われます。外部はプラスチックなのですが、内部は金属や電気コードなどのさまざまな部品で構成されています。そのため、お客さまからは「どのように捨てたらいいのか分からない」というお問い合わせが多いのです。
ウォシュレットとして利用できなくなったものでも、部品として活用できる余地があります。それが捨てられてしまうのはもったいないので、神奈川県の茅ケ崎工場において地域限定的ではありますが、使われなくなったウォシュレットを回収し、試験的にリサイクル化を実施しています。
回収されたウォシュレットは、きれいに洗浄した後、手作業により分解します。金属類とプラスチック類に分別後、前者は売却となりますが、後者は破砕してチップ化やペレット化がなされ、リサイクル樹脂として生まれ変わります。それを使って(※原材料に混ぜて)、TOTOグループの事業所内で使用する物流用パレットや、環境系の展示会でお渡しする文具類などのノベルティグッズにリサイクルしているのです。
この取り組みは、TOTOグループ外で循環させることに加えて、グループ内でも必要なものに生まれ変わらせて、循環させるという意図があります。せっかくなので再度トイレに生まれ変わらせたいという思いから、ウォシュレットの内部部品として一部の機種に活用し、本体体内部の電池系統の部品を納めるプラスチックのケースカバーにリサイクルしています。
もうひとつ、当社の代表的な商品を挙げるとすればシャワーですね。前述のように、トイレに次いで家庭で多く水を使う場所がお風呂です。そして、家庭では空調や照明よりも、お湯をつくる際に最もエネルギーを使います。確かに台所や洗面所でもお湯を使いますが、お風呂が一番多いのです。お風呂では、浴槽にお湯を張る以外にシャワーも使うため、家庭において最もエネルギーを消費する場所といえるでしょう。
当社は特に、お風呂ではシャワーを浴びている時間が長いという点に着目しました。シャワーはトイレ以上に1回当たりで使用する水量が多いため、最新技術により節水を実現する「エアインシャワー」という商品を2010年4月に発売しました。
「エアインシャワー」は「エコプロダクツ2011」の貴社のブースでも展示されていましたね。
「エコプロダクツ2011」では、ストロボを焚(た)いて当社の従来商品との比較を行っていました。シャワーの水量を減らすという場合、今までは水の出る穴(吐水穴径)を小さくする、穴の数を少なくする、配置を変えるなどの工夫を行っていました。しかし、そうすると水の浴び心地が悪い、水に勢いがあって痛いなどといった問題があることが分かりました。
シャワーは毎日使っていただくものなので、浴び心地や快適性を妥協するというのは選択肢にはなく、当社では不快な思いを我慢してまで利用する商品を、お客さまに販売することはできません。快適性は、TOTOの商品において最低限維持しなければならないポイントといえます。そのうえで節水・省エネを満たした商品が「エアインシャワー」なのです。
その名称にあるように、「エアインシャワー」では水に空気を含ませる新技術を採用しています。空気を含ませて水の粒を大きくし、従来品と同様に快適な浴び心地を維持しながら、約35%もの節水も実現しています。
単に空気を水に含ませると勢いが弱まってしまいますが「エアインシャワー」ではその点を工夫し、肌当たりが柔らかいという、浴び心地にも当然ですがこだわっています。空気を含ませた水の粒が大きいため、たっぷり浴びている感覚でありながら、(意識せずに)使用している水の量は従来品よりも少ないというわけです。
本体側でこまめに調節すれば、さらなる使用時間の短縮化や大幅な節水を実現できます。
- 創業100周年を見据えた「TOTO GREEN CHALLENGE」
- 家庭内で水を多く使うトイレとお風呂の節水に貢献する商品
- 自然の力を利用した光触媒で空気も家もきれいに
- TOTOの環境への取り組みをじかに伝えたい!
- 水をきれいにするためにできること
- 節水することが節電につながる