様々な環境関連の番組を放送していますが、代表的な環境関連の番組として、どのようなものがありますか。
ラジオ番組とテレビ番組に分けてお話しさせていただきます。ラジオ番組では、2002年から環境関連のプロジェクトを立ち上げていたこともあり、毎年の夏と冬に1週間ほどの環境キャンペーンを行っています。
今年(2010年)の7月に第17期を迎えたのですが、キャンペーンではレギュラー番組として、いつも番組を担当しているパーソナリティーが、その人の視点でエコについて話をするということにしています。ラジオというメディアはテレビとは異なり、パーソナリティーとリスナーとの長年のおつき合いというか、一種の“親しさのようなもの”があるかと思います。そのようなパーソナリティーの方の発言力・発信力により、環境問題について語ってもらうのが効果的ではないかということで、そのようなキャンペーンを続けています。番組としては、いい形で環境問題を訴えることができたと思います。
レギュラー番組ではほかに、毎週土曜日の早朝5時からの「今日よりちょっといい、明日を」という番組があります。実はこの番組のタイトルが、TBSラジオにおける環境に対する取り組みのスローガンにもなっています。
単に環境への取り組みといっても、経済的な問題や人間のエゴなどを考えると、いいことだから始めてみようという意識を、誰に対しても伝えることができるわけではありません。このスローガンの“ちょっといい、明日を”というのは、環境問題の取り組みにおいてすごく高い目標を目指さなければいけないというのではなく、ほんの少しでもいいから、環境にいいことを行動していこうという意味が込められています。これには、たくさんのことは望まないけれど、何かひとつでも新たなことを始めて、新しい明日を迎えようというラジオ番組らしさがあると考えています。
「今日よりちょっといい、明日を」の番組では、タレントさんを含む様々な方をゲストにお招きして、環境情報やイベント情報について取り上げています。また、レギュラー番組だけでなく、2時間規模の特別番組も放送しています。
テレビ番組では、2007年ころから積極的に環境に関するテーマを取り上げるようになり、2008年には「シリーズいのちの地球」というタイトルで、シリーズ化した特番を放送しています。定期的にというよりは、適宜様々なタイミングで放送を行いました。2008年は北京オリンピックや洞爺湖サミットが開催されたこともあって、環境問題が社会的に注目された年でした。そのようなニーズもあり、2008年は特に多くの環境番組を放送しています。
2006年から、毎年初めに「1秒の世界」というテレビ特別番組も放送しています。これは、「Think The Earth プロジェクト」というNPO法人の編集で出版された書籍が原作となった番組です。1秒間に世界では様々なことが起こっているということを、環境面から取り上げています。例えば、1秒間に世界で1,900平方メートルが砂漠化している、1秒間にテニスコート20面分の森林が消失していることなどを、取材を交えてビジュアル的に分かりやすく伝えています。
昨年(2009年)から放送している特別番組「森のラブレター」では、脚本家の倉本聰さんのNPO法人「富良野自然塾」に協力していただき、すでに営業を終了したゴルフ場を森に還す活動を取材させていただいています。ゴルフ場では木を伐採してコースを作っているわけで、その部分の森がなくなってしまうわけです。そこを森に還すため、多くの方々が木々を植えていくのです。私もこの活動に個人的に参加したことがあるのですが、そんなに簡単な話ではなく、森に戻すためには50年~60年もの歳月がかかるといわれています。
今年の番組では、「富良野自然塾」の1年後の様子や、摩周湖と硫黄山を巡る旅、ツリークライミング(木登り)体験などを紹介しています。
現在(※2010年8月現在)、毎週土曜日の夜7時から放送しているココリコの田中直樹さんと中川翔子さんがMCを務める「飛び出せ!科学くん」も、環境に関連する番組です。昨年のグリーンウィークでは、「飛び出せ!科学くん」のショー(※千石先生with「飛び出せ!科学くん」地球環境と生き物トークショー)を行いました。MCの2人が生物に関する環境クイズの解答者になり、千石先生が分かりやすい解説をするというものです。「飛び出せ!科学くん」は、生き物について興味を持ってもらうことがメインとなっていますが、とても人気のある番組です。今年は「国際生物多様性年」ということもあり、このような番組が地球環境のことを考えるきっかけになってもらえればと思います。
番組を通じて視聴者に伝えたいメッセージなどはありますか。
放送局などのメディアは、“こうしなさい”“こうするべき”というよりも、“世のなかにこのような動きがあります”“このような、次代に残すべき自然があります”といった事柄を、できるだけ多くの方々に伝えることが使命であると考えています。
様々な技術を紹介する一方で、自然の景色が失われていく状況や、環境活動を行っている人たちなどを紹介することも、メディアのもう一方の役割ではないかと思うのです。
そして、そこから先をどう感じ取るか、行動に変えていくかは視聴者の判断であり、強制するものではないと考えています。テレビ番組・ラジオ番組に関係なく、個人的には地球環境の大切さを自発的に感じ取ってもらうことにこそ、意味があるのではないかと思います。
- 「50年先も、世界が“夢”を持ち続けられるために」-「TBSグループ環境ビジョン」
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