宇宙航空研究開発機構JAXA :: 後編

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地球からの呼吸を感じる-「いぶき(GOSAT)」

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宇宙航空研究開発機構JAXA :: 後編

「いぶき」のプロジェクトにおける苦労点はありますか。

2003年に「GOSAT」プロジェクトが立ち上がりましたが、その後しばらくしてから(2003年10月ころ)、環境観測技術衛星「みどりⅡ(ADEOSⅡ)」の運用異常があり、電力を全く供給できなくなるというアクシデントが発生しました。

「みどりⅡ」の事故を受け、「いぶき」でも対策を行う必要がありました。宇宙空間では部品を交換することはできませんので、人工衛星が故障しないようにひとつひとつの部品の信頼度を高めることは当然ながら必要ですが、さらに「いぶき」では、万が一宇宙空間で不具合が発生した場合でも、運用に支障がないような工夫を行うことにしました。

具体的には、JAXAでは「冗長系」と呼ぶのですが、ひとつの部品が壊れても別系統の部品に切り替えができるようにしています。冗長系を多くして、人工衛星を“生存”させるようにしています。このような対応は従来の衛星でもなされていたのですが、センサなどには及んでいませんでした。また、人工衛星には通信系の棒状のアンテナがあります。従来は故障することはまずないだろうと思い、1本しか搭載していなかったのですが、そのようなコンポーネントも冗長にしました。

太陽電池パドルについても、従来の地球観測衛星では一翼、つまりひとつだけでも正常に機能する限り十分だったのですが、「みどり」で発生したように太陽電池パドルが故障すると人工衛星は機能停止となってしまうので、「いぶき」では二翼としています。なお、現在運用中の陸域観測技術衛星「だいち(ALOS)」は一翼です。

温室効果ガス観測技術衛星「いぶき(GOSAT)」

「だいち」は、「みどりⅡ」の事故のときにはすでに最終段階であったので、設計変更することはできませんでした。「いぶき」ではそのような経験を踏まえ、設計の早い段階から太陽電池パドルを二翼としたのです。太陽電池パドルの片方が故障しても、もう一方の半分の電力で最低限の観測をすることが可能です(省エネモード)。

また、信頼性を高めるため、機構部品(要するに動く部品)については地上で運用期間である5年間テストを行うのですが、「いぶき」では、その2倍の10年間に相当する動作量を試験し、十分に耐用できること(寿命)を確認しました。

人工衛星が軌道上に行ってからの信頼性を高める、生存させるという意味で、とても苦労した点といえるでしょう。

「いぶき」では、どのような方法で温室効果ガスを観測するのですか。

簡単にいうと、太陽から放射され地表面で反射した赤外線や、地表(地球)から放出される熱赤外を観測します。光が大気を通過するときに、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスは特有の波長の赤外線を吸収するという特性があります。その吸収量は、温室効果ガスの濃度・量に比例します。そのような点を利用して、大気中に温室効果ガスがどれだけあるのかを観測します。

「いぶき」では、センサに届いた赤外線から「インターフェログラム(干渉波形)」を取得します。インターフェログラムを地上で「逆フーリエ変換」することによって、太陽光スペクトルを得ることができます。二酸化炭素やメタンに特有の吸収波長というものがあります。二酸化炭素では1.60µm(ミクロン)、メタンでは1.65µmといった波長帯です。この部分に赤外線が吸収されていることを示すくぼみが現れます。このくぼみを測ることで、温室効果ガスの濃度や量が分かります。

さらに「いぶき」では2.00µm帯を測ることも可能であり、この2.00µmの部分にも二酸化炭素の吸収帯があるのです。その部分も測ることで、より精度の高い観測を行うことが可能となります。


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