宇宙航空研究開発機構JAXA :: 後編

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地球からの呼吸を感じる-「いぶき(GOSAT)」

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宇宙航空研究開発機構JAXA :: 後編

「だいち」の観測データは、環境問題についてはどのような形で利用されるのですか。

先ほどお話ししました「地域観測」のなかには地球環境観測もあります。地球温暖化を表す事例として、山岳氷河の後退が有名だと思います。氷河の先端が溶けると、そこに水たまり(氷河湖)が生まれるという問題があります。氷河湖の発生がなぜ問題になるのかといいますと、この湖は氷河が長年押し進めてきた土砂が土手となりかろうじてせき止められているだけなので、水かさが増すとその重さに耐えることができなくなり、ついには決壊してしまうためです。氷河湖決壊の一番の問題は、氷河の下流には村落が点在しているケースが多く、決壊すると急に洪水が押し寄せ、村ごと流してしまうことです。ネパールやチベットといった山岳地帯では、このような災害が発生したことがあり、氷河湖の水位変動の監視が重要になっています。ヒマラヤ山脈には数千ともいわれる氷河湖が存在しますが、ひとつひとつを人間が登って確かめることは非常に困難です。しかし、人工衛星では一度に山岳地帯を撮影でき、また過去の衛星画像との比較が可能なため、氷河湖の拡大も一目瞭然なのです。

氷河湖の画像

以上のように「だいち」の観測目的は様々であり、その利用の仕方も異なります。「だいち」の観測画像をどのように使うのかは、私たちJAXAも知恵を絞っているところではありますが、やはり社会がどういうニーズを持っているのかを知ることからだと思っています。まずは、それらに合った形で画像を提供していきたいと考えています。

「だいち」の観測データでは、面白い地形なども発見できるのですか。

面白い地形のデータはいくつかあるのですが、最近発見したものをいくつかご紹介したいと思います。世界中には、ハート型の地形がたくさんあるのをご存知でしょうか。紹介するハート型の地形は、偶然「だいち」の画像データを見ていて発見したものです。例えば、栃木県にある「渡良瀬遊水地の谷中湖」は人工池なのですが、上空からはきれいなハート型に見えるのです。ほかにも「タヒチ・ツパイ島」の環礁、偶然にも雲がハートの形になったカザフスタンの画像など(これは地形ではないのですが)、集めてみると意外と面白いものです。

ハート型の地形 谷中湖
ハート型の地形 ツパイ島
ハート型の地形 カザフスタンの雲

「だいち」の今後の展開についてお聞かせください。

「だいち」の設計上のミッション期間は3年のため、今年(2009年)の1月でミッション達成となりましたが、まだまだ搭載している燃料も残っており、機器類も元気なので、引き続き観測を継続しているとともに、さらに新しい観測ミッションのアイデアを検討中です。また、今後は「だいち」の後継機として「ALOS-2」を打ち上げる計画もあります。ほかにも海面温度や海氷など海洋全般や、雲の発達、降雨強度など地球規模で起こる水循環をターゲットとして観測を行う地球観測衛星シリーズを、今後も継続して打ち上げていく計画になっています。ダイナミックに変化し、人類に大きな影響を及ぼす地球環境の変動を知るためには、数十年に及ぶ観測の継続が鍵なのです。

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環境観測に関する参考の動画

だいち最新画像

地球が見える

金子様 佐々木様
貴重なお時間のなか、取材にご協力いただきありがとうございました。宇宙から地球を見ると、環境問題がいかに深刻なのかが分かります。


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