WWFジャパン

非営利団体

WWFのマークはなぜパンダ?‐WWF発足のきっかけ

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環境問題に対する今後の考えと取り組みについてお聞かせください。

WWFジャパンの設立当初は、本当に動物が好きであり、動物を守りたいという一心で、私たちの先輩は活動をしてきたのではないかと思います。もちろん、私も個人的には動物が大好きですし、そうした人たちと心情を共にしていると思っています。

しかし、現実的に今の環境問題を考えると、その内容が非常に多角化・複雑化していることが分かります。環境問題というのは今や経済問題であり、社会問題であり、安全保障にまでかかわる巨大な問題に「成長」してしまっているのです。

そのなかで、私たちとして取り組まなければならないことの一つは、今後さらに大きなテーマに発展していくであろうと思われる消費のあり方や、エネルギー利用のあり方といった問題だと思います。

増え続ける人類による消費活動が、地球上のあらゆる場所や環境を圧迫し、壊し、枯渇させてしまっていることは周知の事実です。それが意味するのは、未来の世代に対して、今を生きている私たちが大きな「借金」をしていることにほかなりません。効率よく使えば、持続的に利用できるはずの資源を「使い尽くしている」、これが大きな問題です。

したがって、自分たちが消費している製品やエネルギーが、どこの場所で、どのような形で生み出されものなのか、私たちはその点にもっと関心を持たねばならないと思います。そして、消費者一人ひとりが「環境に大きな負荷をかけていないかどうか」を確かめて、その上で消費するものを選択できるようにすることが必要です。

このコピー用紙は、どこかの森の自然を回復できないほどに破壊して作ったものではないか。このフライで使われている魚は、どこかの海で漁業資源を乱獲して獲られたものではないのか。最近トレーサビリティという言葉がよく使われるようになりましたが、こうしたことが、今後の環境への取り組みにおける方針のポイントだと考えています。

そして、もう一つ大事なのは、環境にかかわる問題は地球全体でつながっているということです。

例えば、インドネシアで起きている違法伐採は、日本の国外で起きている問題だから関係ないという人がいるかもせれませんが、本当にそうでしょうか。そこで伐採された木によって作られた紙製品が日本に輸入され、あなたの目の前にあるかもしれないからです。隣の店で売っているパンは、カナダで生産された穀物できているかもしれません。チョコレートの原料は、アフリカで栽培されたカカオかもしれません。

今後は、こうした「つながり」について「知りません」では済まされない状況になってくるはずです。なぜなら、盲目的な消費が拡大し続けることで資源がなくなれば、未来の世代、あるいは私たち自身が困ることになるのです。

他国の問題にも視野を広げ、関心を持つようにしなければ、環境に悪影響を及ぼす製品を使い続けることになるでしょう。環境破壊を止めることができず、野生生物を守ることも難しくなっていきます。

幸い、森の木々も海の魚も、乱伐・乱獲さえしなえれば、回復する「生命力」を持っています。その生命力に配慮しながら、自分たちが消費する分を考えて資源を利用すれば、自然の恵みは「持続可能」な形で使い続けることができます。

また、限りある石炭や石油から、太陽や風力にエネルギーを切り替えていけば、温暖化を食い止めることが可能であり、今の大消費社会の流れを変えることもできるはずです。人の暮らしと環境の問題は、本当に一体なのだと思います。

今年(2010年)はFIFAワールドカップが開催されたこともあり気になったのですが、人と環境に配慮したサッカーボールを販売しているそうですね。

人と環境に配慮したサッカーボールは、FIFAワールドカップが開催されるということもあって、WWFジャパンのオリジナルとして企画された商品です。サッカーボールの内側の素材として使われているゴムはスリランカの森で採取されているのですが、森林環境に配慮して生産された木材を認証する国際的な機関である「FSC(森林管理協議会)」の認証を得ています。

 パンダロゴサッカーボール

森から生産される木材やゴムを総称して「林産物」と呼ぶのですが、スリランカの適切に管理された持続可能な森で採取されているので、環境に配慮されたものということができます。このような形で、環境問題を広く知ってもらおうというわけです。

サッカーボールの売り上げの一部を、どこかに寄付しているのですか。

ゴムはスリランカで採取されたものですが、ボールはフェアトレードの基準に従いパキスタンで生産されています。

実は、サッカーボールの多くは、インドやパキスタンなどの途上国の子どもの安価な労働力により製造されています。ボール1個で30円程度という低賃金で、長時間労働を強いられているという環境なのです。

人と環境に配慮したサッカーボールでは、売り上げの一部はフェアトレードを通じて、パキスタンの生産者にボール1個につき約100円の奨励金という形でお支払いしています。このお金は、現地では主に医療活動のための資金として使われます。

サッカーを通じて途上国の労働環境と自然環境について考えてもらいたいということで、このような形でも環境問題に貢献しているわけです。

今後も、サッカーボールのようなユニークな取り組みをなさる予定なのですか。

そうですね。たくさんの人に共感してもらえるような取り組みができればと思っています。

また、自然や生物の素晴らしさを実際に体験してみることも大切ですね。体験によって自分の問題として認識することも、環境問題を解決し、未来を変える本当の力になるはずです。

今は本当に数多くの情報が手に入る時代になりましたが、その一方で正直なところ、環境問題についてどれだけ危機感を持っている人がいるのか疑問に思うことがあります。

今回のような取材では、「環境問題とは何なのか教えてください」と聞かれることがあります。若い人で環境問題にとても詳しい方にお会いすることもあります。でも、そうした人たちは、環境問題が自分自身の問題だと思っているのかどうか、ちょっと疑問に感じることもあります。

自分やその子どもたちに降りかかる問題として、より危機感を持ってもらうためにも、情報だけではなく、様々な切り口でメッセージを伝えていくことが必要なのだと思っています。

そのなかには、「FSC」の認証を受けたサッカーボールのようなユニークなものも、きっと含まれてくることになるでしょう。今後も試行錯誤を繰り返していきたいですね。

三間様
貴重なお時間のなか、取材にご協力いただきありがとうございました。絶滅の危機にある動物の保護だけではなく、多岐にわたって活動なされていることには驚かされました。


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