今回の「エコなニュース」は、国内に類を見ない広大な敷地面積と建物群を擁する、ホテルニューオータニ様の取組みをご紹介。
ホテルニューオータニでは、「ホスピタリティ」と「環境対策」という一見相反するコンセプトを「循環型社会」という視点を軸に様々な工夫で両立。さらには、社員を巻き込むことで双方をより高める取組みを進めているそうです。その詳細は、どのようなものなのでしょうか。
ファシリティマネージメント部
ファシリティマネージメント課 係長
三浦 光昌様
早速ですが、よろしくお願いいたします。
ホテルニューオータニは本当に広いですね。
少し敷地内を歩いてみたのですが、色々な表情を持った空間がありますね。
ここホテルニューオータニは、約69,200m2という広大な敷地に、ザ・メイン、ガーデンタワー、ガーデンコート、新紀尾井町ビルという4つの建物が建つ、日本に類のない敷地面積と建物群を持つホテルです。宿泊施設以外にもレストラン、オフィスなどもございますので、「複合型コミュニティ」という表現の方が適切かもしれませんね。
これだけ広いと、“お客様をおもてなしする”という視点で、全体を俯瞰しながら細部を適切に維持していくのも大変そうですね。ましてや、その中に「環境保全」という全く異なるコンセプトを加える事は、相当難易度が高いような気がしますが。
ホテルニューオータニは、開業当時から環境、特に「省エネ」について、業界の中でもかなり先進的な取組みを進めてきました。取組み当初においては、そこには「環境保全」という視点がメインにあったわけではなく、どちらかというと「省コスト」という視点がありました。
日本に類のない敷地面積と建物群、そして設備を持ち、それらを稼働させてお客様をおもてなしするためには、多くのエネルギーが必要、つまりコストがかかります。これをどうやって小さくしていくかというのは、ホテルニューオータニにとって大きな経営課題です。これをきちっと考えていく上で、効率の良いエネルギー運営をするということが大前提となり、それを軸に建物を建て、あるいは設備を導入していったのです。
これら取組みを着実に進めてきた結果、今の時代になって「環境保全」という面でも大きな価値を創り社会の皆様からご評価いただけていると感じています。
設備導入の状況
導入年月 | 内容 | 投資額 |
---|---|---|
64年 9 月 | 米ヒバ受水槽導入開始(現在16槽) | |
74年 9 月 | ゴミ梱包プレス機導入 | |
74年 9 月 | 動力用電力節電導入開始 | |
91年 2 月 | 中水造水プラント導入 | 3億5,000万円 |
91年 2 月 | コジェネレーション・プラント導入 | 12億円 |
95年 3 月 | 騒音対策(車両呼び出しミニFM放送) | 1,000万円 |
95年 7 月 | 氷蓄熱プラント 第1期導入 | 2億円 |
96年 5 月 | スチームアキュムレーター導入 | 7,000万円 |
96年 7 月 | 静電気防止カーペット導入(~98年12月) | 1億3,800万円 |
97年 3 月 | 客室家具リサイクル実施(タワー/~98年 9 月) | 1億1,000万円 |
97年 5 月 | 水蓄熱プラント導入 | 1億1,000万円 |
97年 7 月 | 紫外線対策(レストランなど) | 800万円 |
97年 8 月 | レストラン家具リサイクル実施(「ベルヴュー」) | 520万円 |
97年10月 | 緑地保護のための植林 | 3,000万円 |
98年 5 月 | 氷蓄熱プラント第2期導入 | 4,800万円 |
98年 8 月 | レストラン家具リサイクル実施(「SATSUKI」) | 1,100万円 |
99年 5 月 | コンポスト・プラント導入 | 1億1,000万円 |
99年 6 月 | 家具リフォーム工房設置 | |
99年 8 月 | レストラン家具リサイクル実施(「Taikan En」) | 1,000万円 |
99年11月 | 静電気防止カーペット導入(ザ・メイン ロビィ階) | 2,200万円 |
00年 5 月 | 環境事業戦略会社NREハピネス(株)設立 | |
00年11月 | 静電気防止・消臭カーペット(宴会場階など約9,000m2) | 4億円 |
01年 4 月 | 超高効率水冷スクリュー冷凍機導入 | 3億円 |
02年 9 月 | 飼料製造プラント導入(幕張) | 3,000万円 |
04年 3 月 | 排熱回収高効率ヒートポンプ導入 | 2億円 |
07年10月 | ハイブリッドホテルプロジェクト(ザ・メインリニューアル) ・AEMS導入 ・フルハイトウインドウ採用 ・屋上緑化(約2,800m2) |
100億円 9億5,000万円 65億円 1億3,000万円 |
もともと何か環境目標があってというよりは、経営上で必要なことをきっちりと積み上げてきた結果が、環境の保全にもつながっているということなのですね。では実際に、「ホスピタリティ」と「環境」という一見相反するコンセプトをどう両立させているのでしょうか?
両立のキーワードに「循環型社会」があります。
ホテルニューオータニを「ホテル」という位置付けで捉えてしまうと、新しい発想がなかなか出にくくなってしまうので、「都市・社会」と位置付けて物事を考えたりします。街の中で出てくる課題や問題というのは、規模は小さいながらもホテルニューオータニでも起こり得ますので、そういった事柄に対して、世の中はどのように解決しているのかな?という風に検証して、ホテルニューオータニの様々な企画や設計に活かしています。
そして「循環」―「都市・社会」とも深くつながるコンセプトですが―という点では、これだけ広大な敷地・建物となりますと、建物や設備・機械を単体で運営するよりも“何かとつなげてエネルギー消費を抑制しよう”とか、“この余っているエネルギー、何かに使えないかな?”など、常に「連鎖」や「循環」で運営を考えた方が、効率が良くなります。
ホテルニューオータニでは、これらを繋げて「循環型社会」というキーワードで「ホスピタリティ」と「環境」を両立させる取組みを進めています。
- 「ホスピタリティ」と「環境」。一見、相反するコンセプトを「循環型社会」という切り口で両立
- 循環型社会の中の、“小さな循環”の積み重ね
- 徹底的に社員を巻き込むことで、環境がホスピタリティ価値の向上に