今回の「エコなニュース」は、「フラットパック」などで積極的に環境への取り組みをなさっているイケア・ジャパン株式会社様をご紹介。
イケア・ジャパン株式会社様では、「フラットパック」の採用や「IGR(IKEA Goes Renewable)」というプロジェクトなど、数多くの取り組みをなさっているようです。その詳細は、どのようなものなのでしょうか。
IKEA Green & Sustainability Responsible 秋葉様
早速ですが、よろしくお願いいたします。
環境への取り組みを始めたきっかけについてお聞かせください。
世の中で“サステナビリティ”という言葉が使われだしたのは、最近のことかと思います。でも、当社の場合は起業したころからすでに、製品の製造・開発においてそのようなことを意識していました。
現在も変わっていないのですが、当社ではより機能性やデザインに優れた低価格の製品について、環境に対する責任を持ちつつ開発することを、起業時である60年ほど前から(※取材日:2010年12月22日)すでに行っていたのです。
そのため、環境への取り組みを始めたきっかけというよりも、「気づいたらそれを行っていました」というのが正確な表現かもしれません。
イケアグループ全体でも、サステナビリティという言葉をあえて使い始めたのは最近のことであり、それについて責任を持って担当する部門を設けたのも2000年以降になってからです。それだけ、環境への取り組みというのはごく自然なこととして受け入れられていたわけです。
すでに環境への取り組みを行っていた理由に、創設者であるイングヴァル・カンプラード(Ingvar Kamprad)が、起業した当時からスウェーデンだけではなく世界への進出を考えていたことを挙げることができます。その意味では、イケアが大きくなるにつれて原材料の調達や、工場・物流などが重要になっていくことは予測できていたわけです。
最初のうちは企業の規模も小さいので、環境への取り組みも小規模だったのですが、現在では世界中に約309ものストアがあるので、必然的に取り組みの規模も大きくなり、具体的な活動も深いところまで行うようになっています。
環境への取り組みを、企業当時から自然と行われていたというお話ですが、行動規範「IWAY」というものを策定なされていますね。そちらの具体的な内容についてお聞かせください。
現在の「IWAY」の内容は10年ほど前に策定されたものであり、「IWAY」自体が策定されたのは、それよりもかなり昔となります。
「IWAY」は「The IKEA Way on Purchasing Home Furnishing Products」の略称であり、サプライヤー(原料の供給側)がイケアに期待できることと、イケアがサプライヤーに求めることが明記されています。
私たちは“人間と人間のつながりを大事にする”という企業体質を有しています。そのため、イケア自体では工場を持っていません。しかし、パートナーとして選ぶ工場や原材料調達先の地域については、“人間として当たり前に従業員が働いていること”を重視しています。なぜなら、当社は人間として当たり前の生活をするため、快適な暮らしを提供する企業でありたいと考えているからです。
そのような意味では、「IWAY」と呼ばれる行動規範には、何か企業として実践すべき新しいことに気がつくと随時追加がなされており、内容として固まったのは10年ほど前というわけです。今後も内容のブラッシュアップを行っていく予定です。
当社のビジネスモデルは、「Our business idea」に記載されている「to create a better everyday life for the many people」という文章に集約されており、当然ですがおつき合いすることとなるお客様だけではなく、サプライヤーなどとも“いい関係”を構築していきたいという考え方がありました。気がつくと、サステナビリティと同じように、それを起業時からすでに実践していたのです。いわば、言葉があとからついてきたというようなイメージでしょうか。
仕事の場面ごとに「IWAY」の内容を作っていくのですが、仕事が拡大していくとおつき合いする業者さんも増えていくので、その内容は多岐にわたることになるわけです。
カンプラードは創業した当時、すでに世界を視野に見据えていたこともあり、所得のピラミッドの上部にいる富裕層ではなく、ボトムラインの層(経済的に貧しい人たち)をターゲットに、低価格の製品を提供しなければならないと考えていました。
世界規模で見た場合、一番多いのはボトムラインの層です。カンプラードはその人たちに対して快適な暮らしを提供したいという思いを持っており、そのためにも低価格ということを重視していました。イケアを創設した当時、日本の家具業界でもそうなのですが、間に必ずといっていいほど代理店(卸し)が入っていました。代理店を介してストアに並べられ、それがお客様のお手元に届くという仕組みになっていたわけです。しかも、間に入る代理店が多いので、当社が努力して低価格で家具を製造しても、ストアで販売されている価格は2倍~3倍になってしまっているのです。
そのため、カンプラードはそのような仕組みや体質を変えることから取り組みました。実は、彼は世の中で最初に、取引において代理店をなくした人間なのです。全部、直接自分たちで責任を持って取引をしなければ、製品を低価格でお客様に提供することの実現は不可能だと考えたわけです。
当社が製品の梱包に「フラットパック」を採用した理由も、コストの削減と運送の効率化という点が大きいといえます。テーブルの脚を取り外し、平らな形で格納することで、従来の立体型のダンボールを使用したときよりも多く運ぶことが可能になったことは、カンプラード自身が地道に取り組んできた成果のひとつです。
彼自身がこのような取り組みを始めたころは、社会的な反発が強かったようです。“アンチイケア”の人も多く、当社とは取引しないという大規模な反対運動が起こりました。
だからこそ、カンプラードは社会に責任を持つ企業になることを強く意識していたようです。お客様が認めてくれる企業であれば、代理店が何をいっても、取引せざるを得なくなるわけです。その意味で、社会に対する責任というのが大事であると、企業当時からすでに思っていたのです。
特に日本の場合、直接取引の仕組みを構築するのはかなり大変だったのではないでしょうか。
確かに、大変ではなかったといえば嘘になります。昔も現在もそうなのですが、当社はプライベートカンパニー(非公開会社)なのです。イケアには社外の株主がいないので、自分たちが世の中の人たちのためになると思った行動を信じて実践すれば、間違いはないという信念・風土があるわけです。それに基づいて、現在まで地道に取引の仕組みを構築していきました。
- 環境への取り組みはごく自然なこと-「IWAY」
- 見栄えがいいだけではない-「環境に配慮したデザイン」
- 厳格な森林管理基準-「サステナブルな原料調達」
- 「IKEA Goes Renewable」と水資源への取り組み
- CO2排出量の削減-「気候変動防止プロジェクト」
- 世界で一番大切なのは子どもたち-「IKEA Social Initiative」
- イケアの終わりなき取り組み-「The Never Ending job」