「環境に配慮したデザイン」を採用しているとのことですが、具体的にはどのようなことですか。
一概に「環境に配慮したデザイン」といっても、様々な切り口があります。
ライフサイクルデザインという概念的な観点からいうと、先述した製品の梱包に使用している「フラットパック」が、「環境に配慮したデザイン」の代表として挙げられるでしょう。梱包の段階から適度なサイズに収めることで、積載量を最大限に増やして輸送回数を減らし、CO2の削減に貢献しています。
製品のライフサイクルにおいて、サステナビリティという側面を常に意識してデザインを行っているという意味で、「環境に配慮したデザイン」と呼んでいます。
積載量を最大限に増やして、トラックの台数や輸送回数を減らすことについては、創業当時から続けられています。また、コンテナ内部を見直すことで積載面での効率化を図っています。通常であれば500個ものコンテナが必要となるところ、効率化により、現在では150個~200個ものコンテナを減らすことができました。
「環境に配慮したデザイン」をシンプルに説明すると、単に見栄えのいいデザインという意味ではないということです。見栄えのいいデザインの製品を提供するというのは、当社の“お家芸”ともいえることなので、改めて述べる必要もないかと思います。
イケアでは製品のデザインが決められてから、お客様の手元に届けられるまでという、“製品のサイクル全体”において環境につながっているということを知ってもらいたいのです。
例えば、「クリッパン(KLIPPAN)シリーズ」というソファーの一部では、ノックダウン式(組立式)を採用しています。以前は、完成した形のまま販売していましたが、現在では座面(シート)・背もたれ・両脇(アームレスト)の部分に分解し、「フラットパック」のサイズに収まるようになっています。つまり、購入後にお客様に組み立ててもらうわけです。これにより積載量を増やし、輸送回数を減らしてCO2の削減、さらにはコストの削減による低価格化を実現しています。
実は、ソファーは最もかさばる製品のため、環境への影響を抑えつつ経済的に輸送することは困難でした。このような製品の改善や製品サイクルの見直しは、イケアでは随時行われているのです。そういった意味で、「環境に配慮したデザイン」と述べているわけです。
すでに多くの製品で組み立て式を採用しており、当社の従業員でも、組み立て式であることを知ると驚くようなものもあります。
お客様には、「セルフサーブ」という倉庫のエリアで製品を選んでいただき、お家で組み立ててもらいます。当社で製品を購入した方であればお分かりかと思いますが、組立説明書を見ていただくと、組み立て方の絵だけが載っています。これにより、世界中のどなたでも、絵を見ただけで直観的に、簡単に組み立てることが可能となっているわけです。
製品のサイクル全体を指して「環境に配慮したデザイン」と述べているとのことですが、リサイクルの側面についてもお聞かせください。
私の肩書に「Green & Sustainability Responsible」とあるのですが、各ストアに「Green」と呼ばれる部署が存在します。
世界中のどのストアでも、レジの前にはアウトレットコーナーというものがあります。基本的にストアの2階がショールームとなっているのですが、そこにはたくさんの展示品があります。それらの展示品は季節によって変えられるのですが、Greenの部署が責任をもって展示品を管理しています。
通常であれば、変えられてしまう展示品は不要になるわけですが、イケアの場合はほかのストアのショールームで使うことができないかを確認し、それが無理ならばGreenの部署が引き取り、アウトレットコーナーで安くお客様に提供しているのです。もし、製品としての機能が損なわれているのであれば、パーツに分解して倉庫に保管し、修理などに使われます。
それらでも無理だとなって、ようやく廃棄という流れに進むのですが、廃棄時でもリサイクルを最優先に考えます。
このように、ストア内のGreenという部署がアウトレットコーナーに代表されるような、環境に配慮した取り組みを進めているとういうわけです。
最終的に廃棄となる量は、現在では製品全体のわずか3%~4%ほどではないでしょうか。製品サイクルの全体図には「End of Life」とありますが、廃棄までを考えて、各国のストアのGreenの部署が日々、環境負荷を低減させる取り組みを行っています。
「Green」と呼ばれる部署には、どれくらいの人たちが所属しているのですか。
船橋のストアでは、10人ほどが所属しています。ほかのストアでも、10人前後はいるかと思います。
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