今回の「エコなニュース」は、関東以北の高速道路の管理運営や建設などを担う東日本高速道路株式会社(NEXCO東日本)様の取り組みをご紹介。
東日本高速道路株式会社様では、高速道路の緑化や「エコロード」の推進、植物廃材を活用したバイオマス発電の研究など、数多くの取り組みをなさっているようです。その詳細は、どのようなものなのでしょうか。
技術本部 環境部 環境技術課 課長代理 松田友也様
早速ですが、よろしくお願いいたします。
環境に関する取り組みを始めたきっかけをお聞かせください。
NEXCO東日本では、昨今の地球規模における環境問題の深刻化や環境意識の高まる以前の昭和30年代から、沿道環境保全や自然環境保全、生物多様性の保護など、高速道路における環境の取り組みを“自然体”で進めてきました。
日本最初の高速道路である名神高速道路が開通したのは1963年(昭和38年)なのですが、道路緑化を重視する当社では、建設工事に着手した1958年(昭和33年)から、すでに樹木による道路の緑化を考えていました。よって、環境に関する取り組み原点(きっかけ)は、この本格的な高速道路における緑化を行い始めた名神高速道路のころからだといえるでしょう。
当時、日本風の自然と調和した道路を目指し、名神高速道路の各種構造部や施設に関する美的設計を審議する「特殊設計審美委員会」という組織が設置されました。そこでは、架橋の形式や塗装の色彩など、各種設計において広範囲にわたって視環境からの議論が行われ、道路植栽についても審議されました。そのころは樹木の市場性がほとんどなかったため、直営の苗畑を設置するという提案が出て、1958年に「名神高速道試験所石部分室(※)」を開設したのです。余談ですが、最初に手がけた工事というのは高速道路の建設工事ではなく、樹木などを直営で育成する植栽場の造成工事だったのです。
※現在は「株式会社高速道路総合技術研究所 緑化技術センター」に名称を変更。同センターは、滋賀県湖南市にある。
また、日本の高度成長期になると、自動車が頻繁に通過することによる騒音や大気汚染などの公害にも対応してきました。そういう意味では、当社の環境に関する取り組みは、社会情勢の変化や国の施策、多様な国民のニーズに対応するため、業務の1つの柱として進められてきたといえるでしょう。
日本道路公団からの分割・民営化により2005年(平成17年)10月1日にNEXCO東日本(東日本高速道路株式会社)が誕生しました。現在では、従来の取り組みに加え、地球規模の温室効果ガス削減などの環境保全、循環型社会形成に対する取り組みも必要であることから、2007年7月に当社では「環境方針」と「環境行動指針」を策定しています。
「環境方針」と「環境行動指針」では、どのような内容を定めているのですか。
NEXCO東日本では「環境への取り組み」を経営の重要課題としており、自然環境や生活環境に対してどのように取り組むべきかを定めています。
民営化の際に、経営理念として“高速道路の効果を最大限発揮させることにより、地域社会の発展と暮らしの向上を支え、日本経済全体の活性化に貢献する”ということを掲げました。その実現に「環境への取り組み」がどのように貢献していくのか、具体的な方向性が必要であるため「環境方針」と「環境行動指針」を策定したわけです。また、これは経営理念やCSRを補足する環境への方針を明確にして、NEXCO東日本の企業姿勢を、できる限り多くの方々に分かりやすく伝えるものでもあります。
「環境方針」では“NEXCO東日本は、環境への取り組みを経営の重要課題と位置付け、社会の責任ある一員として、地球環境の保全や循環型社会の形成に貢献するとともに、沿道の生活環境や自然環境の保全の取り組みを進めることにより、社会から信頼される企業を目指します。”と述べています。
そして、環境方針に基づいて「環境保全の取り組み」と「技術開発」、「環境経営の取り組み」という3つの柱を「環境行動指針」で定めています。「環境保全の取り組み」では、近年深刻化する地球温暖化や循環型社会形成への貢献、環境負荷の低減を掲げています。高速道路を建設するとなると、どうしても自然環境や沿道の生活環境に影響が及んでしまう場合がありますが、その負荷をできる限り低減させることに努めます。
これらの環境への配慮は、NEXCO東日本の経営理念における前提条件であり、それに積極的に取り組むことが「社会から信頼される企業」へとつながると思っています。
- 自然に環境に関する取り組みは始まった
- 高速道路がいかに地球温暖化防止に貢献できるのか
- 騒音による沿道環境へ及ぼす影響を低減する
- 「エコロード」を建設するために
- 将来を見据えた再生可能エネルギーの研究
- 「環境のこれまで」と「環境のこれから」を考えていく