遮音壁裏面を活用した「太陽光発電システム」についてお聞かせください。
道路空間という限られた範囲のなか、効率的な発電を行うことを目指して、道路付帯施設の遮音壁裏面を活用した太陽光発電システムの研究を進めています。この太陽光発電システムはまだ実用化されてはいないのですが、両面受光型・外装版一体型・曲面型という3つのタイプがあります。現在、10キロワット相当の太陽光発電システムを設置し、耐候性や耐久性、発電効率などに関して実験を行っています。
両面受光型というのは、太陽光パネルをガラスで挟んだようなタイプです。一般に、太陽光発電というと日射量の多い南向きに設置するのですが、このタイプでは東西向きで設置します。午前中は東側から、午後は西側から日光が当たるというわけです。南側に設置できない場所でも、両面受光型によって太陽光発電の利用が可能です。
普通の太陽光発電の場合、午前中に徐々に発電量が上昇し、13時や14時ごろに最大となり、次第に下降していきます。しかし、両面受光型では午前と午後の2回に発電量がピークを迎えるようになり、太陽の向きを考慮せずに設置できるというメリットがあるのです。このタイプは、館山自動車道の市原サービスエリアで研究を進めています。
遮音壁がある場所を効率的に利用する目的で、太陽光発電を付けたのが外装板一体型です。これは、遮音壁内部に太陽光パネルを組み込んだタイプとなります。このタイプについては、東京外環自動車道の和光インターチェンジで研究中です。
遮音壁のなかには曲面を取り入れたものもあるため、曲げ加工のできる集光型球状シリコンを採用したタイプが曲面型です。このタイプは、関越自動車道の寄居パーキングエリアの屋根に設置して研究中です。
場所に応じてどのタイプも十分利用できるのではないかと思っています。実用化できるよう研究を進めていきます。
太陽光発電と同様、再生可能エネルギーの活用ということで、バイオマスガス発電にも取り組んでいますね。
バイオマスガス発電は、東北道那須高原サービスエリアに隣接する所で現在研究を進めています。高速道路における緑化の機能を発揮させるために維持管理をすると述べましたが、間伐や剪定、草刈りなどにより植物廃材が発生します。
その植物廃材は、堆肥やチップとしてリサイクルされ、のり面の基盤材などに使われていますが、ほかに何か有効活用できないかという発想から新たな使い道として、バイオマスガス発電の実証実験を進めています。昨年(2011年)、ようやく「那須バイオマスガス発電プラント」を建設することができました。実用化に向けて研究を進めている段階であり、今年4月より本格的な実験がスタートしています。
バイオマスガス発電は社会的にはそれほど新しい取り組みではないのですが、NEXCO東日本では刈草も原料に利用することを考えており、この点は珍しい試みであると思います。
現在、植物廃材から良質のガスを取り出し、効率的な発電につなげていくか試行錯誤を重ね、年間通じて実験に取り組んでいきます。
植物廃材を活用したバイオマス発電の仕組みについて、教えていただけないでしょうか。
仕組みは、裁断された植物廃材を「熱分解炉」という装置内で加熱し、ガスを発生させて、それをディーゼルエンジンに供給して発電させています。
ただし、原料を燃やしてしまうとCO2の発生につながるので、加熱(蒸し焼き)方式で行います。加熱は“燃焼”とは違い、ほとんどCO2が発生することなく、同様にダイオキシンの発生がないので、とても有効な方法です。
どうしてもガス化した後に残ってしまうのが「炭化物(チャー)」と呼ばれるものです。
この炭化物についても、土壌改良材など、ほかに有効活用の方法についても研究を進めていきたいと考えています。もし、これが実現できれば、植物廃材によるバイオマスガス発電では捨てるものが何もなくなるのではないかと思っています。
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