これだけは話しておきたいということはありますか。
そうですね。最後に「地域性苗木」についてお話します。
日本道路公団時代からの取り組みに「地域性苗木」というものがあります。これは、当社だけでなく、NEXCO中日本とNEXCO西日本でも取り組んでいます。
前述のように、道路を建設する際に山を切り開いた後には緑化を行っています。特に自然環境が豊かな地域では、その地域に自生している植物の種を採取して、それを育てた苗を再度現地(採取地付近)に戻して植えるというのが「地域性苗木」という取り組みです。
先に紹介した滋賀県湖南市にある「株式会社高速道路総合技術研究所 緑化技術センター」に種を持ち込み、3年ほどかけて苗木にまで育てています。その苗木を、種を採取した場所に植えるということを今でも継続して行っており、現在までに約118ヘクタール(約17 万本)に植樹を実施しています。
植物の種というのはその地域固有の遺伝子情報を持っており、「地域性苗木」は地域の生態系・種・遺伝子という3つのレベルで生物多様性に貢献する取り組みといえるのです。また、地域の方々と一緒に種の採取や苗木の植樹を行うことにより、地域との連携や自然を守るという環境教育にも貢献できます。
その地域に自生する植物の種子採集に関するマニュアルの整備、発芽促進方法の確立、育成から管理・植栽までの一連のシステムを構築することで、移入種による遺伝子のかく乱を防止するなど、生物多様性の保全に貢献した点が高く評価され、NEXCO3社を代表して株式会社高速道路総合技術研究所が、2009年度の「土木学会環境賞」や2010年の「日経地球環境技術賞」を受賞しています。
環境への取り組みに関する今後の方針についてお聞かせください。
今まで実施してきた取り組みを、これからも持続的に行うことが当社の基本的な方針といえるでしょう。
昨今では、地球温暖化や生物多様性、循環型社会の形成などが注目されていますが、NEXCO東日本では「環境にやさしい高速道路」と「沿道の生活環境や自然環境と共存・共生していく高速道路」の実現に向けて、「環境のこれまで」と「環境のこれから」を考えていきます。
松田様
貴重なお時間のなか、取材にご協力いただきありがとうございました。高速道路というのは、実は環境のことを考えて建設・管理されているのですね。
- 自然に環境に関する取り組みは始まった
- 高速道路がいかに地球温暖化防止に貢献できるのか
- 騒音による沿道環境へ及ぼす影響を低減する
- 「エコロード」を建設するために
- 将来を見据えた再生可能エネルギーの研究
- 「環境のこれまで」と「環境のこれから」を考えていく