東日本大震災では、運送業ということもあり影響は大きかったのではないですか。
確かに、昨年(2011年)3月に東日本大震災という不幸な出来事を経験しましたが、一方で社会的インフラとしての物流の重要性を再認識されたように感じました。そのようななかでヤマト運輸では何ができるのかを考え、復興支援活動に取り組みました。
そのうちのひとつが「救援物資輸送協力隊」を中心とする、被災地での輸送協力活動です。これは、当社がトップダウンで隊の組織を進めたわけではなく、被災地の社員が従来の宅急便とは別に、自発的に立ち上げたものなのです。
救援物資は、大規模な施設である物資集積所には送られているのですが、整理に時間がかかり、本当にそれらを必要としている避難所の方々には届いていないという状況でした。そのような状況を被災している現地の社員が目の当たりにし、動かせる車両もあるので救援物資を運ぶお手伝いをさせてほしいと行政に掛け合い、通信が断絶状態にあったなかで、本社の指示を待たずに自分たちの判断で行ったのです。
そのような現場の社員の活動を知った本社が、後から約200台の車両・約500人規模で「救援物資輸送協力隊」を組織しました。今年(2012年)の1月15日に宮城県気仙沼市を最後に終了しましたが、延べ1万4,286人、車両4,187台が救援物資の輸送に当たりました。
宅急便を利用する方に便利で、さらに環境にも良いサービスがあるそうですね。
当社では、個人会員制サービス「クロネコメンバーズ」を展開しています。そのサービスのひとつでは、荷物をお届けする前にお客さまへeメールを送り、eメールを受信したお客さまが記載されている配達日時に荷物を受け取ることができない場合、その日時を変更する、配達場所をコンビニエンスストアに変えることなどが可能です(※宅急便受取指定)。このように、お客さまには自分の好きな時間・場所で荷物を受け取ることができるメリットがあるのですが、実は当社にもメリットがあります。
お客さまが不在の場合、翌日以降に何度か配達に伺います。しかし、「クロネコメンバーズ」のサービスでお客さまが事前に配達日時を変更していれば、1回配達に伺えば済むわけです。その分手間がかからずに済むとともに、車両の使用回数を減らし、CO2排出量の削減に貢献できます。
また、無料の「クロネコヤマト公式アプリ(※)」を提供しており、荷物の発送や配達状況といった履歴を確認することなどが可能です。
※取材時点ではiPhoneアプリのみ。Androidアプリは追って公開予定。
従来は手入力しなければならなかった伝票番号を、バーコードのスキャンにより手間を省くというように、スマートフォンならではの機能を十分に活用しています。また、荷物が配達中というステータスのときに、急用で外出しなければならない場合などでは、担当ドライバーの電話番号が表示されるので、お客さまがお電話をして配達日・時間帯変更を行うことも可能です。
今後は、先ほどの「宅急便受取指定」などの「クロネコメンバーズ」のサービスと連携し、さらにお客さまが利用しやすいサービスを提供していく予定です。今年の1月5日に公開したのですが、3週間ほどで21万件もダウンロードされており、お客さまには好評のようです。無料なので、多くのスマートフォンユーザーの方にご利用いただければと思います。
環境への取り組みに関する今後の方針についてお聞かせください。
従来は地球温暖化対策を柱に、車両に関連した取り組みを中心に行ってきました。今後は取り組みの範囲を広げ、環境に優しい物流ネットワークを構築することと、持続的社会の構築に貢献することを目標としていきたいですね。具体的には、輸送や集配におけるCO2排出量の削減、施設における省エネ、地域における環境貢献などの取り組みを増やしていく予定です。
2019年に当社は創業100周年を迎えることもあり“一番身近で一番愛される企業”を目指すというビジョンを掲げています。そのため、環境に関しても一番地域に合った、一番地域に貢献できる取り組み事例を増やしていきたいです。
秋山様
貴重なお時間のなか、取材にご協力いただきありがとうございました。運送業でありながら、CO2排出量の削減のため、車両をできるだけ使わないという取り組みには驚きました。
- グループ全体で地球温暖化防止対策を推進
- できるだけ車両を使わない集配
- どうしても使うならば低公害車
- 安全と環境に配慮した運転の徹底
- 社内における環境啓発活動の推進
- 創業100周年に向けた環境への取り組み